
脳は特定の「邪魔者」を学習する 現れる場所を予測する仕組み
仕事や勉強をしているとき、突然目立つものが目に入ると、つい注意を奪われてしまう。本来の目的とは関係なく注意をそらしてしまうこうした「邪魔者」を、心理学では「妨害刺激」と呼ぶ。中国の南方医科大学や英国のオックスフォード大学などの研究チームは、妨害刺激が現れやすい場所を脳が学習し、その影響を小さくする仕組みを調べた。研究成果は6月2日、『Nature Communications』に公開された。
実験には28人が参加した。画面に並んだ複数の図形から形の異なる図形を探し、そこに描かれた線が縦か横かを答えてもらう内容だ。その際、探す対象とは関係のない目立つ色の図形を妨害刺激として加えた。妨害刺激は6カ所のうち特定の1カ所に65%の確率で現れ、残り5カ所にはそれぞれ7%の確率で現れる。この規則性は教えられていなかったが、課題を繰り返すうちに参加者は、特定の場所に妨害刺激が現れやすいことを学習した。すると、妨害刺激がよく現れる場所に出た場合の方が、ほかの場所に出た場合よりも目的の図形を見つけるまでの時間が短くなった。
研究チームはさらに、目ではほとんど分からない小さな眼球運動「マイクロサッカード」と脳波を調べた。その結果、画面が表示される前からマイクロサッカードの頻度が変化し、妨害刺激が現れやすい場所に向かう動きが、それとは反対方向より多くなっていた。脳波からも、その場所に関する情報が表示前から読み取れた。つまり脳は、妨害刺激が現れやすい場所を予測し、あらかじめ対応する準備をしていたと考えられる。研究チームは、妨害刺激を最初から抑え込むのではなく、いったん注意が向いた後に素早く抑制する「反応的抑制」という仕組みが働いている結果だとしている。
私たちが一度に向けられる注意には限りがある。脳は、どこに妨害刺激が現れやすいかを学習することで、その対応を効率化しているのかもしれない。今回の実験は画面上の視覚課題で行われたもので、スマートフォンの通知や仕事中の雑音など、日常生活のあらゆる邪魔なものに同じ仕組みが働くことを直接示したものではない。それでも、必要な情報に集中するため、無関係なものへの対応時間を短くする脳の仕組みを示す研究として興味深い。
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