スローカロリーの勧め

 「日本人のエネルギー摂取量と糖質摂取量は1970年代から年々減少しているのに、高血圧、脂質異常症、糖尿病が増加しているのは、摂取するカロリーが偏っているためではないか?」と、今年2月10日に設立されたスローカロリー研究会の第1回講演会で報告された。
 体内で速く吸収される食べ物は「ファーストカロリー」といい、糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスクを高める。逆に、ゆっくりと吸収される食べ物を「スローカロリー」という。
 ファーストカロリーには、ファーストフード、食物繊維が少なすぎる食品、白米、白パン、ブドウ糖、砂糖、果糖などがある。これらは、十二指腸から小腸の上部で素早く消化吸収されるため、肝臓への糖流入速度が速い。そのため血糖値が急速に上昇し、インスリンが過剰分泌されることで、肥満、脂質異常症、高血圧、糖尿病、脂肪肝を起こしやすくなる。
 スローカロリーには、玄米、野菜全般、食物繊維を適量含む食品、全粒粉パン、パラチノースなどがある。これらは小腸全体でゆっくりと消化吸収されるため、肝臓への糖流入速度が遅い。そのため血糖値はゆっくり上昇・低下し、インクレチンの分泌を高めて適量のインスリン分泌を促すことで、脂肪肝や糖尿病の発症、内臓脂肪の蓄積を抑制し、血糖値の上昇を抑制することができる。
 70年代以降、日本人の摂取カロリーは、スローカロリーが減少し、ファーストカロリーは増加している。ダイエットをする時に「低カロリー」「ゼロ・カロリー」といった、“量”だけで選ぶのではなく、「スロー」か「ファースト」かという“質”に注目して選ぶことで、「元気で太りにくい体づくり」ができると期待される。