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ベトナム新大学、理事長に戦争参加の米退役軍人 現地の思いは複雑

オバマ米大統領のベトナム訪問時にベトナム初の非営利私立大学フルブライト大学ベトナム校の設立が正式に決定し、理事長にベトナム戦争に参加した米国の退役軍人、ボブ・ケリー元上院議員が就任した。同氏は戦争時に虐殺事件にも関与しており、ベトナム人の間では今回の就任について「過去に向き合って両国の関係改善に努める姿勢を評価し、過去のことは許してあげるべき」という意見があるが、一方で「理事長就任は不適切だ」という意見もあり、賛否両論となっている。米ニューヨークタイムズオンライン版が2日に報じた。

「過ちを修正する機会」前向きな意見も

1969年、ケリー氏の率いる米海軍特殊部隊は、ベトナム南部メコンデルタのタインフォン村で、女性や子供を含む数十人の村民を虐殺していたことが2001年に明らかになり、氏はそれを認めている。その時のスピーチで氏は「軍事的勝利ではなく、悲劇だった。私が命令した。32年間、その時のことが頭に付きまとって離れない」と述べた。
今回の就任に関しては、「自分が理事長でいることが、この米越共同の教育事業を危機にさらすならば、私は辞退することも考える。ベトナムの人たちをとても尊敬するようになったので、彼らを全力で支援していきたい」と述べた。
氏は1991年から大学の設立に携わっており、上院議員時代には、米議会から財政援助を取り付けることにも関わった。

ジェットスター・パシフィック航空の元最高経営責任者ルオン・ホアイ・ナム氏は「ボブ・ケリー氏を憎むこと、フルブライト大学ベトナム校の理事長を辞任するよう願うことは簡単だが、半日間考えて『許す』という、より難しい方を選ぶことにした。私はボブ・ケリー氏を許すし、多くのベトナム人にも彼を許してほしいと思っている」とコメントした。
北部ハイフォン市のある教師は「新しい位置で、ベトナム人のためになることをすることで、過ちを修正する機会を彼に与えるべき」と述べている。

「許しても、忘れてはならない」

一方、ホーチミン市の新聞記者グエン・ドゥック・ヒエン氏は、ケリー氏が事件の後30年間事実を伏せてきたことを指摘し、「ベトナムでの知的活動や、米国の価値のベトナムへの投資を代表する人となるべきではない。フルブライト大学の開校は歓迎するが、米国の代表に選べる人は他にもいるはず」と述べた。

作家であり退役軍人であるグエン・ヴァン・トー氏は、「ボブ・ケリー氏に会う機会があったら、彼を歓迎するだろう。私は戦争の痛みをすべて許し、忘れたい。人々はボブ・ケリー兵士を許すことはできるが、罪のない市民を殺すという罪は忘れてはならない。これは全世界が永久に追及すべき罪悪である」と、「許す」ことと「忘れる」ことの違いを強調した。

参考記事
オバマ大統領 22~25日にベトナム訪問予定 TPPなど議論

 
(写真はイメージ)

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