
バイオマス発電の副産物を再資源化 CO₂削減にも貢献 東北大など
東北大学は10日、八戸工業高等専門学校などとの共同研究で、木材燃焼後に残る木質バイオマス灰を資源として循環利用できる技術を開発したと発表した。CO2削減と資源循環の両立に向けた実用的な手法として期待できる。この研究成果は国際学術誌に掲載された。
生物資源を燃料とするバイオマス発電において、木質バイオマスの利用が拡大しているが、それに伴い燃焼副産物であるバイオマス灰の排出量が急増している。木質バイオマス灰にはカリウム(K)やカルシウム(Ca)などの有用元素が含まれる一方で、環境や人体に悪影響を及ぼすカドミウムなどの重金属も共存するため、安全かつ効率的な利用が困難だった。そのため多くが産業廃棄物として処理されて、バイオマス発電の経済性を損なうだけでなく、埋め立て処分場のひっ迫など環境負荷の増大が課題となっていた。
研究グループは、繰り返し使用可能な植物由来で生分解性のキレート剤とCO2の組み合わせに着目した。キレート剤は金属イオンを安定して捕まえることができる化合物で、重金属の除去に利用できる。
まず灰をキレート剤水溶液で処理して、重金属を取り除いて減量化する。続いて抽出液中に取り込まれたカリウムとカルシウムを、排ガス中のCO2を利用してカリ肥料(KHCO3)や工業原料(CaCO3)として析出させる。このプロセスは100℃以下で常圧という温和な条件下で行うことができる。生成物は高純度で得ることができ、KHCO3の純度は99.5%に達した。また、プロセス全体で灰1トン当たり約300kgのCO2を固定化できた。 今回開発した技術により、バイオマス発電を廃棄物リサイクルやCO2削減にも貢献する資源循環型システムへと進化させることが可能になる。今後は技術のスケールアップや産業界との連携を通じて社会実装を進めていく。

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)

