里山における伝統的な管理法が植物の多様性を向上 東京都市大学など

東京都市大学と横浜国立大学の研究グループは、都市域での里山環境の森林管理において、今は行われなくなった伝統的な「下草刈り」と「萌芽更新」を再導入することが、植物種数の維持・向上に貢献することを証明した。都市圏で生息地が分断された空間では、人の関わりが生物多様性に重要であることが示唆された。

日本の里山では、下草刈り(森林の下層部に生える草を刈ること)や萌芽更新(一回切った切り株から再び芽を伸ばして木を育てること)といった伝統的な管理によって意図せず生物多様性を維持してきた。しかし、燃料革命により薪を使わなくなったり、生活習慣の変化で里山に手を入れることが少なくなった結果、森林の遷移が進み、生物多様性が低下していることが報告されている。

研究グループは、人為的管理と生物多様性の相互作用に着目し、伝統的管理手法を再導入することで、都市域に残存する里山の植物多様性にどのような影響をもたらすのかを検討した。市民によって伝統的管理が再導入された場所と、管理が放棄された場所を比較し、草本層から大本層までの植物種を記録。在来種や希少種の種数と個体数を評価した。同時に、土壌水分量や林床への日射量、周辺1㎞圏内の土地利用も解析した。その結果、伝統的管理が行われている場所は管理が放棄された場所よりも、植物種数が多いことがわかった。下草刈りや萌芽更新によって直接的または間接的に多様な植物が共存できる環境が形成されていると考えられる。周辺の都市化の程度や農地や森林の割合といった景観要因の影響はほとんど存在せず、都市域では生息地そのものの質が生物多様性を左右することも示された。

今回の研究結果はヨーロッパで報告されてきた伝統的管理の生物多様性保全効果と一致し、東京においても人の関与による適度な攪乱が、生物多様性の維持に不可欠であることが示された。しかし、人口減少や高齢化により下草刈りや萌芽更新の担い手が不足しており、今後は省力化や新たな管理体制の構築が求められる。

写真提供:東京都市大学