「沖ノ鳥島」をめぐる議論 小さな島が持つ重要な役割とは?【ニュースのコトバ解説】

東京都心から約1700キロ南の太平洋上に、満潮時にはわずかしか海面に姿を見せない陸地がある。「日本最南端の島」とされる沖ノ鳥島だ。

沖ノ鳥島は、海底火山の頂上にサンゴ礁が発達してできた環礁で、環礁の外側から海底は急激に深くなり、周辺には数千メートル級の深海が広がる。つまり大陸から続く浅い海の上にあるわけではない。環礁全体は東西約4.5キロ、南北約1.7キロに及ぶが、満潮時にも海面上に残る自然の陸地はごくわずかで、人が定住できる環境ではない。それでも日本は護岸や消波ブロックを整備し、観測施設を維持してきた。

こういった点から、時に島ではなく岩だとされることがある沖ノ鳥島は、長年、国際的な論点となってきた。それは国連海洋法条約(UNCLOS)では、島と岩で認められる海洋権益が異なるため、島と岩という言葉の違いだけの話ではなく、この小さな陸地が国際法上、広大な海域の権利の基点となり得るという事情がある。

日本は、沖ノ鳥島を基点として約40万平方キロメートルの排他的経済水域(EEZ)を主張している。その広さは日本の国土面積を上回る。そこでは漁業や海洋調査に加え、海底鉱物資源の探査や国際通信を支える海底ケーブルなど、多様な経済活動が展開できる可能性がある。現在、日本は沖ノ鳥島を国連海洋法条約上の「島」と位置付けている一方、中国などは「岩」としており、見解は一致していない。これは島か岩かという議論は単に呼び名の問題ではなく、この海域における権利の問題ともいえるのだ。

沖ノ鳥島の面積だけを見れば、その存在は取るに足らないようにも映る。しかし、その周囲に広がる海域は、日本の海洋政策や資源利用、海洋調査、安全保障を考える上で重要な意味を持つ。沖ノ鳥島をめぐる議論は、日本が広大な海域をどのように管理し、活用し、守っていくのかという海洋政策とも結び付いている。

冒頭の写真:沖ノ鳥島の航空写真提供:国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所