
中国のミサイル発射とQuad接近、問われる中小国の選択
2026年7月から8月にかけて、アジア太平洋の安全保障環境をめぐる2つの動きがあった。中国による太平洋上での弾道ミサイル発射と、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による「Quad」と東南アジア諸国連合(ASEAN)の協力強化である。背景には、中国の影響力が広がる中で、各国が地域の安定と自国の利益をどう両立させるか模索する動きがある。
7月6日、中国は潜水艦から太平洋の公海に向け、訓練用模擬弾頭を搭載した潜水艦発射型弾道ミサイル1発を発射した。中国は訓練の一環と説明しているが、周辺国には懸念が広がった。
8月6日の太平洋諸島フォーラム(PIF)外相会合では、この発射をめぐる共同声明の採択で合意できなかった。中国との関係を深めるキリバスやナウルなどが支持しなかったとされる。中国との関係を重視する国と、ミサイル発射に懸念を示す国との立場の違いが表れた形だ。PIF首脳会議は8月30日〜9月4日にパラオで開催される予定で、ミサイル発射への対応が引き続き協議される見通しだ。
一方、7月22日にフィリピン・マニラで開かれたQuad外相会合では、ASEANとの協力強化を打ち出した。4カ国はASEANの「一体性」と「中心性」を支持し、海洋・国境を越えた安全保障、経済安全保障などで協力を進める方針を示した。
ASEANの「中心性」とは、地域の外交や安全保障をめぐる対話でASEANが中心的な役割を担うという考え方だ。大国間の対立が強まる中、ASEANが中国や米国など複数の国・枠組みと関係を築くことは、外交上の選択肢を広げることにもつながる。
中国のミサイル発射とQuadによるASEANとの協力強化は、アジア太平洋の地域秩序が単純な「中国対米国」の構図だけでは捉えられないことを示している。太平洋島嶼国やASEAN各国は、それぞれの利益や安全保障上の立場を踏まえながら、複数の国や枠組みとの関係を築いている。今後は、大国間の力関係だけでなく、中小国がどのような外交上の選択をするかも、地域の秩序を左右する要素になりそうだ。
画像提供:外務省(7月22日に開かれた日米豪印(Quad)外相会合の様子)

