対人関係選択の自由度 地域間で差

対人関係選択の自由度 地域間で差

北海道大学は2日、同大学院文学研究科の結城雅樹教授らの研究グループが、地域の自然条件や社会環境によって、人間関係の自由度が変わるという調査結果を発表した。世界39カ国・地域のおよそ1万7000人を対象とした調査では、厳しい自然・社会環境下での関係流動性は低い傾向だったという。

関係流動性とは、それぞれの社会における、対人関係の選択の自由度のこと。関係流動性の高い社会では、見知らぬ人との出会いの機会が多く、対人関係を自由に選んだり、選び替えたりすることが比較的容易である。関係流動性の低い社会では、同じ人たちとの付き合いや同じ集団への所属が長期にわたる傾向があり、対人関係を変更することが比較的困難といわれる。

これまで一般に欧米諸国に暮らす人々の方が、東南アジア諸国の人々よりも人間関係に積極的に関わるという現象がみられてきたが、これを学術的に説明することは困難だった。結城教授らのグループでは仮説を立ててさまざまな実証研究を実施してきたが、アメリカと日本など特定の二カ国の比較にとどまっていた。

今回の調査では、フェイスブックの広告を用いて募集した世界39の国と地域の住民1万6939人にアンケートを実施。その回答をもとに分析したところ、関係流動性は主に欧米圏、オセアニア圏、中南米圏において高く、主にアジア圏、中東圏において低いことが分かった。また、関係流動性が高い国の人々は他者に対して親密さを感じやすく、自尊心が高いなど、人間関係を積極的に作る傾向にあった。そして関係流動性は、その地域の自然や社会環境によって左右され、過酷な地域や、稲作など相互の助け合いが求められる食料生産を行っていた地域ほど、低い傾向にあることがわかった。

この研究結果は人の心の多様性の理解につながるとともに、インターネットの発展などによる人間関係の流動性が急速に進行しつつある現代の将来設計・教育に関する議論の参考になることが期待される。

対人関係選択の自由度 地域間で差
画像提供:北海道大学(冒頭の写真はイメージ)