ハチミツの加熱処理 細菌感染が予防できる可能性

ハチミツの加熱処理 細菌感染が予防できる可能性

名古屋市立大学の牧野利明教授らは、ハチミツを適切な温度と時間で加熱処理すると、消化管において免疫力を高める作用を持つ成分の産生誘導作用を持つ物質に変化し、新たな機能性を持つことを発見した。感染症を予防できる機能性食品の開発などが期待できるという。国際民族薬物学会が発行する「ジャーナル・オブ・エスノファーマコロジー」に電子速報版として13日に公開された。
 

生薬の加工でもハチミツの有無で免疫に優位な違い

ハチミツは身近な食品であるだけでなく、日本薬局方に収載されている生薬でもあり、中国伝統医学では、生薬の消化管に対する機能を高める添加物として利用されている。例えば甘草かんぞうは、中国式ではあらかじめハチミツに浸してから炒める。一方、日本式ではハチミツに浸さずに炒めるだけだ。

先行研究では、甘草はハチミツを利用した加工法のほうが免疫の活性化作用が高いことが明らかになっている。伝統医学における「消化管の機能を高める」という作用を、「消化管免疫を活性化させる作用」と解釈して、中国式と日本式のそれぞれで加熱加工した甘草の消化管への影響を調べると、細胞間情報伝達物質サイトカインの一種「顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)」が上皮細胞から産生誘導される作用で、中国式の加工法に優位性が認められたのだ。そこで研究グループは、ハチミツを利用して加熱加工する意義に着目した。
 

加熱ハチミツを投与すると細菌への耐性が向上

今回研究グループは、中国伝統医学で良品とされるナツメ由来のハチミツを加熱処理すると、培養消化管上皮細胞からのG-CSF産生誘導作用が新たに生じることを発見。これは加熱していないハチミツでは認められなかった。この時のハチミツを加工する条件について比較したところ、180℃、1時間の条件で最も高い作用が生じ、それ以上加熱すると活性が低くなった。

次に研究グループは、この加熱したハチミツが実験動物レベルでも免疫を活性化するかを検証した。マウスに加熱したハチミツを1日1回経口投与しながら飼育し、2日目の投与直後に、化膿レンサ球菌をマウスの皮下に接種した。ハチミツの代わりに生理食塩水を飲ませたマウスでは、メスでは菌接種の翌日、オスでは2日目までに全匹死んだ。しかし、加熱したハチミツを飲ませたマウスでは、メス、オスともに統計学的に有意な延命が認められた。

この加熱したハチミツに含まれるG-CSF産生誘導作用を持つ成分を分離したところ、平均分子量730kDaの高分子化合物だった。この化合物の特徴を調べると、グルコース、ガラクトース、ラムノースの他、ハチミツを加熱殺菌するときに生じる5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)と、これまで報告のない新しい化合物が含まれていた。

ハチミツの加熱処理 細菌感染が予防できる可能性
画像提供:分子科学研究所(冒頭の写真はイメージ)