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食べ物のえり好みは集団維持に必須 アカハネバッタの研究で明らかに

京都大学大学院理学研究科と横浜国立大学大学院環境情報研究院の研究により、絶滅危惧種であるアカハネバッタが、潜在的には様々な植物を食べることができるにもかかわらず、実際には食べるものをえり好みしていることが明らかになった。さまざまな植物を食べられる昆虫も、生息地の植物の多様性が集団の維持を左右する可能性があるという。この研究成果は、10月30日に「Biological Conservation」オンライン版で公開された。

両大学院は、環境省に絶滅危惧種として指定されているアカハネバッタの食性を解明するために、糞に含まれる植物からDNAを抽出して解析をした。アカハネバッタはさまざまな植物を食べられるにも関わらず、放棄地等の草地には生息せず、植物多様性が非常に高い半自然草地にしか生息しないということが分かっていたが、その理由は不明だった。

今回、糞から得られる植物のDNAを解析した結果、アカハネバッタは19の科にまたがった36種の植物を食べていることが明らかになった。さらに、糞中に含まれる各植物と野外植物の頻度を比較したところ、アカハネバッタは食べられる草をランダムに食べているのではなく、積極的に食べる種をえり好みしていることが分かった。バッタ類は餌中の栄養バランスがよいほど成長が早く、多くの子孫が残せるため、栄養が偏らないように食べる餌を選ぶことが知られている。そのためアカハネバッタも、餌となる植物はあるが種類が少ない草地では集団が維持できず、伝統的手法により管理された、植物の多様性が非常に高い草地でしか生息できないということが示唆された。

同研究によって、植物の多様性が高い草原の維持・管理は、草原を利用している多様な生物に重要であることが示された。また、いろいろな植物が食べられる昆虫でも絶滅の危機にある場合、これを保護するためには、生息地の保全だけではなく、生息地内の植物多様性を含めた保全策を講じる必要がある可能性も示唆された。

(写真はイメージ)