変わる地方銀行 生き残りをかけたFintec活用

変わる地方銀行 生き残りをかけたFintec活用

特集 平成はこんな時代だった

みずほ銀行は2月20日、QRコードを用いた決済サービス「J-Coin Pay(ジェイコインペイ)」を発表した。地方銀行(地銀)など約60の金融機関と協働し、1日より順次サービスを開始している。「J-Coin Pay」は、スマートフォンのアプリで、預金口座から24時間1円単位でチャージが可能、他のJ-Coin Payユーザーへの送金、チャージ金の預金口座への払戻も無料だ。

人材不足やインバウンド対応のため、近年、国はキャッシュレス化を推進している。QRコードは加盟店側の導入ハードルが低く、全国の地銀の顧客基盤を活かせるのも強みだ。地方の人口減少と競争激化により、地銀の経営は厳しいといわれている。業界再編など変化の大きい時代を生き抜くべく、地銀が歩んできた道のり、これから挑む新たな取り組みを紹介する。

 

地方銀行のなりたちは?

都市部でも沢山みられる地銀の看板。横浜銀行、静岡銀行、千葉銀行、福岡銀行……。全国には第二地方銀行を合わせ、105行もの地銀がある。その総預貯金残高は大手銀行合計と並ぶ約3割、貸出金は約4割を占めている。

2013年12月に金融庁がまとめた「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」では、中央主導で地銀に再編と統合を促した。2018年5月、金融庁が県別に地銀の存続可否を色分けした「再編必要度」マップを公表し、賛否両論が起きたのも記憶に新しい。

地銀の始まりを遡ると、1872(明治5)年の国立銀行条例に端を発する。金銀と交換可能な紙幣を発行する国立銀行として、第一国立銀行(現、みずほ銀行)、第二国立銀行(現、横浜銀行)などが設立された。その後、全国に150余りの銀行が設立され、殖産興業の発展に寄与した。その後、現在に至るまで様々な統廃合を繰り返してきた。

 

地域の特徴を生かした取り組み

現在、岐路に立つ地銀は、従来の貸出、運用、決済手数料収益に加えて、地域の特性に合った事業やフィンテック事業を進めている。北海道銀行のアグリビジネス(農業者向けファイナンス、ビジネスマッチング)、観光ビジネス(観光業向けのローン、ニセコなどのインバウンド対応)や、京都銀行の街並保存ビジネス(京町屋ローン、環境保全、リフォームローン)などが挙げられる。その他、医療・福祉ビジネス(医療者向けのローン、地域自己医療支援)、再生エネルギービジネス、過疎地・災害用移動店舗など、地域と密接に関わった事業が特徴的だ。

フィンテックに関する研究会や会社も作られている。2018年6月に、群馬銀行(前橋市)や池田泉州銀行(大阪市)などの地銀7行が設立したフィンテックの新会社「フィンクロス・デジタル」は、AI開発やRPA(Robotic Process Automation・ロボットによる業務自動化)導入、キャッシュレス化などに取り組んでいる。2016年11月には、常陽銀行(水戸市)や百十四銀行(高松市)など地銀5行が、三菱東京UFJ銀行(現、三菱UFJ銀行)や日本IBMとフィンテック共同研究会「Chance FinTec Lab」を立ち上げた。地銀のフィンテックサービスは、地域振興や街づくりという地元に深く根付いた活動の中心になることも多い。

インターネットが発達し、移動も容易となった社会では、都市に住む必然性はなくなってきたと言われている。地方都市と海外都市が連携して産業を興したり、副業で都会と地方を行き来したりする人材シェアも広がりつつある。変化の時代においては、どの企業も変革しなければ生き残るのは難しい。地銀が、引き続き、地域特性を生かして地域経済の発展と人材交流を促して、再編が進むことを期待したい。

(写真はイメージ)