歓迎会シーズン、お酒に飲まれないための基礎知識 後編

歓迎会シーズン、お酒に飲まれないための基礎知識 後編

前編では飲酒に関する重要なポイントを解説しました。まず、医学的に絶対に行なってはいけないこととして、「人にアルコールを無理やり飲ませること」と、「短時間に一気飲みなどで大量の飲酒をすること」の2つ。そして、医学における最新の研究結果によると、健康損失を最小限に抑えるための「適量」はゼロとなっていることです。

飲酒をする以上は、健康への影響にノーリスクはなく、いかにしてローリスクに抑えながら楽しむかが重要となります。後編では、具体的な飲酒量とリスクの目安と、飲酒量を自分でコントロールするための方法を紹介します。
 

解説:垣渕洋一
成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター長
専門:臨床精神医学(特に依存症、気分障害)、産業精神保健
資格:医学博士 日本精神神経学会認定専門医

 

どれくらいならばお酒を飲んでもよいのか?

飲酒量に比例して、どのようにリスクが高くなるのかはその人の健康状態によっても異なりますが、ここでは、実際に医療の減酒指導の現場で用いている、おおよその数字を挙げておきます。自分の酒量と健康リスクを振り返る、参考になさってください。

<ローリスクの飲酒量>
これぐらいまでであれば、5~10年とアルコールを楽しんでも、健康被害をさほど心配しなくてもよい量。

純アルコール換算で男性は1日20g以下、女性は10g以下
週に2日以上飲酒しない日をもうける。
週当たりでは、男性100g以下、女性50g以下


<ハイリスクの飲酒量>
これ以上飲み続けると、様々な健康被害が必発となる量。

純アルコール換算で男性は1日60g以上、女性は30g以上

*なお、純アルコールの量を割り出す方法は、
純アルコール(g)=飲酒量(ml)×度数(10%なら0.1)×0.8(アルコールの比重)
です。

また、基準飲酒量として1ドリンク=純アルコール10gという単位が近年使われており、これによると酒類ごとに1ドリンクに相当する酒量は以下の通りです。

ビール・発泡酒(アルコール度5%) 250ml
チューハイ(7%) 180ml
ワイン(12%) 100ml
日本酒(15%) 80ml
焼酎(25%) 50ml
ウィスキー・ジンなど(40%) 30ml

この数字を見て、どのように感じられるでしょうか。

「え!? ローリスクの飲酒量って、こんなに少ないのですか? これでは、飲んだ気がしませんね!そこまで減らすのは無理です」といった声を減酒指導の現場では実際に多く耳にします。実は筆者も、初めてこの数字を見たとき時に、「これは少ない!」と感じた記憶があります。

つまり、それほど私たちは通常、本来のリスクを知らず無意識に、危険量のアルコールを口にしているわけです。

すでに飲酒による問題が表面化しているならばなおさら、専門家の指導や治療を受けてでも、ローリスクの飲酒を目指すことは、健康被害を食い止めるために急務だと言えます。

一方、飲酒問題が表面化しない場合でも、
純アルコール換算で男性は1日40g以下、女性は20g以下
までに抑えることをお勧めします。

 

ローリスクの飲酒量におさめるための心構え

実際、体に悪いと分かっていてもアルコールをたしなむ習慣をお持ちの方は多いと思います。また、アルコール飲料が食文化およびコミュニケーション手段の一部として社会に根づいており、酒類に関するよいイメージを煽る広告に慣らされていると、「それほど悪いものだとは思えない」という刷り込みもどこかにあるかもしれません。最後に、減酒の一助として、アルコールを飲む上で心得ておくとよいポイントを挙げておきます。

・アルコールは薬だと心得ておく。
アルコールは嗜好品だと思われていますが、実はれっきとした「薬」なのです。アルコールには、一時的に不安やウツをやわらげ、やる気を起こさせ、苦痛を取り去る作用がありますが、薬だから副作用もあるのです。それを分かって、ほどほどにしておこうとする心構えを持っておくことをお勧めします。

・やけ酒、怒り酒、涙酒は飲みすぎに繋がると心得ておく。
ネガティブな気分を打ち消すための飲酒は、効果を大きく感じる分だけ酒量を増やしがち。また、酩酊から覚める時、飲酒前より一層、ネガティブな気分になる危険があります。飲酒するより、シラフで信頼できる人に話を聞いてもらう、運動して発散するなど、飲酒以外の対策を考えてみましょう。

・現状を知る。
以前の記事でも紹介したAUDITを利用して、自分の飲酒のリスクの程度を把握できるので、ぜひお試しください。

・飲酒記録をつける。
「見える化」をすることで、自分の現状を把握し、目標設定の材料になります。

・目標設定をする。
ローリスクの飲酒量におさめることで、達成したい目標を設定します。肥満、糖尿病、肝炎といった健康障害があれば、それを改善することが目標になります。健康障害がない場合は、金銭の節約、時間の節約などでもよいです。

純アルコール換算で100gを連日飲んでいる人が、いきなり、「1日20g以下かつ週2日の休肝日」は無理。まずは、「今より減らす」という目標を設定する方がおすすめです。

・その他、酒量を減らすための小さな心がけ
□お酒を飲みすぎてしまう相手と場所を避ける
□お酒の誘いへの断り方を上達させる
□お酒以外の楽しみ(趣味)を増やす
□お酒は自分にとって効用より害の方が多いことを思い出す
□お酒を飲むことを家族が心配していることを思い浮かべる
□お酒を飲んで自分の病気が悪くなることを思い浮かべる
□お酒を減らせたら健康になることを思い浮かべる
□酒席では、まず食事を食べておなかをいっぱいにする
□酒席では、お酒以外の飲み物をまず飲む
□酒席では、小さいコップで飲む
□一口飲むたびにコップをテーブルに置く
□次の一口までの時間を長くする
□1日に3時間以上は飲まない
□酒席では自分のコップを空にしない(注がれないように)
□注がれないように断り方を上達させる
□周りの人に目標を宣言して協力してもらう
□一緒に酒を減らす(止める)仲間を見つける
□夜10時以降はお酒を飲まない

(写真はイメージ)
 

【参考記事】
アルコール依存症になりやすい体質とは? 後編(2018/06/08)

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