AIを使った手話学習ゲーム 日本財団と香港中文大学が開発

日本財団(東京都港区)は24日、香港中文大学と共同で、「手話」や「ろう者」理解の促進を目的として、AIを使った手話学習ゲーム「手話タウン」のベータ版を開発したと発表した。

従来の手話学習教材は、学習者が手話の映像等を見て手話を記憶する形式が主流だが、今回開発した「手話タウン」は、学習者が学んだ手話をパソコンのカメラの前で表現すると、AI技術によって習得状況を確認することができる。GoogleがAIによる手話認識技術の研究開発に携わった。

ゲームは手話が公用語の架空の町にいるという設定で、手話を駆使しながらアイテムを集めていく。学習者は、カメラに向かって実際に手話でアイテムを指示しながら、旅行に備えて荷物をまとめたり、宿泊するホテルを探したり、カフェで食べるものを注文したりと、様々なテーマに合わせた手話を学ぶことができる。手話言語は、日本手話と香港手話から選ぶことができる。

手話は、ろう者が意思疎通を図るために使用する言語であり、ろう者の社会参画を促進するためには、手話で生活ができる環境を整えていく必要がある。2006年には「手話は言語である」と明記された国連障害者権利条約が採択され、日本国内でも2011年に障害者基本法で手話の言語性が認められている。しかし、依然として手話とろう者への理解が十分に浸透しているとは言い難く、生活の様々な場面で不便な状況が生じる現状にある。

一方で、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延で政府会見に手話通訳を付与する例が世界各国でみられるなど、手話への関心は高まりつつある。このような状況下で、最先端技術を活用して手話やろう者への理解を促進するため、「手話タウン」ベータ版が開発された。手話の表現の学習だけでなく、手話を母語とするろう者の文化も学ぶことができる構成になっている。

日本財団と香港中文大学は今後、利用者のフィードバックに基づいた改善を行ったうえで、手話言語の国際デーである9月23日に完成版の公開を目指す。

手話をパソコンカメラで認識する様子

画像提供:日本財団