• Talent
  • 一人ひとりの多様な個性・才能が生かされる社会に

4月から高校教育はこう変わる! 新しい学習指導要領をポイント解説

20224月から、高等学校の新しい学習指導要領が実施される。どのような目的で改訂されたのか、今までと何が変わるのか、そして社会には何が求められているのかなど、改訂のポイントを解説する。

学習指導要領とは?

学習指導要領とは、教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準のこと。全国のどの地域でも一定水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省が定めている。社会の変化を見据えて、子どもたちがこれから生きていくために必要な資質や能力について見直しを行い、約10年おきに改訂されている。近年では、小学校の新学習指導要領が2020年度から、中学校は2021年度から実施されており、高等学校は2022年度から実施される(高校については2022年4月の入学生から3年間に渡って年次進行で実施される)。

ここでは、今春から実施される高校の新しい学習指導要領の内容について見ていきたい。

教科・科目はこう変わる

まず、教科と科目の構成は以下の通りとなった。黒枠で囲まれているのが新しい科目となる。

注目される新設教科の一つが「理数科」だ。内容は、数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせ、多角的・複合的な視点で事象を捉え、探究して、課題解決に必要な資質・能力を育成することを目指す、教科横断的な科目となる。具体的には、さまざまな事象に対して課題を設定し、仮説を立て、実験や観察を行い考察し、研究結果をまとめ発表することに取り組む。

また歴史の必修科目として、「歴史総合」が新設された。これは、世界と日本を広く相互的な視野から捉える近現代史を学ぶ科目だ。他にも「総合的な探究の時間」や、必修化された「情報I」など、特筆すべき内容は他の記事で別途取り上げる。

また、言語活動の充実のため、国語をはじめ各教科等で批評・論述・討論などの学習を充実させたり、理数教育において数学Iの統計に関する内容が必修化されたりするなどの改善が図られている。

戦後最大の授業改革で何が起こる?

新学習指導要領では、「社会に開かれた教育課程」が謳われている。つまり、未来社会を切り拓くための資質・能力とは何かを社会と共有・連携し、その育成を目指すということだ。そして、こうした資質・能力を確実に育成し、知識の理解の質をさらに高めるために、「主体的・対話的で深い学び」が必要とされている。

これは、生徒が各教科・科目等の特質に応じた見方・考え方を働かせながら、知識を相互に関連付けてより深く理解したり、情報を精査して考えを形成したり、問題を見いだして解決策を考えたり、また思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程を重視した、探究的な学習だ。先の教科・科目構成で紹介した、「総合的な探究の時間」や「理数探究」などにもそれが表れている。

今まで高校教育は、授業料の無償化などの外面的な改善に終始していたが、今回の学習指導要領の改訂は、生徒の多様で高度な資質・能力を育てる探究的な学習を全面的に取り入れた授業改善の取り組みだ。

こうした大幅な授業改革は、戦後最大と言われている。

高度な知識・技能だけでなく、主体的な問題解決能力を育む教育がいかに成されていくか、教員自身の探究や保護者・地域の協力が欠かせない。また、こうした教育を受けた子どもたちが社会に出てくる2030年に向けて、受け入れる側の社会においても主体性や他者との協働力が問われるだろう。

参考資料:
文部科学省ホームページ
月刊高校教育2022年2月号
田中博之『探究授業の創り方』学事出版、2021年

(冒頭の写真はイメージ)