4月から始まる高校の金融教育 社会経済の仕組みを学ぶ

学習指導要領の改訂により、4月から高等学校の「公民科」や「家庭科」で金融教育が本格的にスタートする。公民科では社会における金融経済の仕組みについて、家庭科では投資信託などの金融商品や資産形成の授業が行われる予定だ。

既に始まっている中学校の金融リテラシー教育をもとに、高校では金融の仕組みやリスク管理、資産形成についても学び、世の中の動きを捉え、収支バランスを考えてライフプランを行う力を身につける目的。4月からは成人年齢が18歳に引き下げられ、親権者の同意なしに証券口座の開設やクレジットカードの作成も可能となる。お金に関する知識や判断力を身につけ、生きる力を高める教育が求められている。

高校における金融教育にあたり、証券・金融業界では、教員向けのセミナーや教材提供等の支援が行われている。日本証券業協会や東京証券取引所が提供している金融教育の教材を紹介する。

体験して学ぼう!金融・経済・起業 金融クエスト

グループワークなどの体験学習を通じて、起業や投資の意義、株式会社の仕組みや、社会の変化と会社への影響、資産形成などについて理解を深める教材。レジャーランドの取締役になって経営改善をしながら株式会社の仕組みを学んだり、大航海時代の商人になって資金調達を行って金融の仕組みを学んだり、ゲーム感覚で興味をもって知識を身につけられるよう工夫されている。これらが50分で実施できるワークとして用意され、紙媒体やWEBツールを組み合わせた授業ができるように作られている。

株式学習ゲーム~株式で学ぶ経済の動き~

1996年度より実施されている中高生向けの教材で、米国の教育現場で実績のあるStock Market Gameをモデルにしている。仮想所持金(1000万円)を元手に、実際の株価に基づいてシミュレーションで売買を行う。株式の模擬売買を通じて、株価変動の背景となっている現実の経済、社会の動き、企業の見方を養い、経済行為における責任を学ぶことを目的としている。

JPX起業体験プログラム

起業家としてゼロからビジネスを立ち上げる体験型の教育プログラム。株式会社を擬似的に設立・経営することを通して、自ら学び考える力を育む。ビジネスプランの作成、投資家へのプレゼンテーション、株式発行、仕入れと販売、決算から納税まで、公認会計士や司法書士らの協力のもとで体験することができる。責任を持ってビジネスに取り組むことで成功や失敗、働くことやお金を稼ぐことの楽しさと大変さを学ぶことを目的とした教材だ。

金融経済は人が生まれてから死ぬまで関わり続ける重要なことだ。金融教育の中で、私たちが生きている社会経済の仕組みを学び、自身のお金に関する選択と判断が、自分の未来だけではなく、国家や世界の未来にまでも影響し繋がっているものであることに考えを深め、生きる力と価値観を磨く機会になることを願う。

(写真はイメージ)

 

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