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これからのAI人材教育に求められるものは? ビッグデータ活用の次の段階へ

AI(人工知能)技術は日進月歩で進化していますが、日本国内ではこの分野の専門人材が2030年には最大79万人不足すると言われています。では、今どのようなAI人材が求められているのでしょうか。実際にプログラミング教室を経営して人材育成に携わっている、吉金丈典さんにお聞きしました。

解説:吉金よしかね丈典たけのり

大阪大学・基礎工学部・博士前期課程卒業後、大手電機メーカーに8年間勤務したのち、そろばんLABO芽育を開校。小中学生10人以上の有段者を育てた実績を持つ。2018年より小学生向けのプログラミング教育にも取り組む。

 

ーー「AI人材」と一口に言っても、具体的にどのような人材が要請されているのでしょうか?

2016年に打ち出された第4次産業革命に向けた人材育成の改革では、小中学校の算数・数学教科の中に「データの利活用」が単元として組み込まれることになりました。また、高校の情報科の学習内容も大幅に改定され、文部科学省の作成した情報Iの教員向け資料には「情報システムにより蓄積されたビッグデータを課題解決に活用することが重要視されている」とあり、小中高と一貫してビッグデータを利活用する人材を育成することに国が着目していることがうかがえます。

さらに近年では、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会「Society 5.0」が打ち出されています。このような社会では、IoT(Internet of Things)ですべての人とモノがつながり、さまざまな知識や情報が共有されるほか、AIによって必要な情報が必要な時に提供されるようになります。

つまり、人間が情報を見つけて分析する社会から、AIを利活用することで知識や情報の共有が必要になる社会に変化するのです。

医療・交通・金融等どの分野をとっても、これまでは状況に応じてビッグデータの処理モデルを迅速に組み立て、人間が介在しデータを利活用して方針を決定していました。しかし、これからは人間がAIを利活用してデータを判断し、課題を解決していく時代に突入していきます。こうした社会の変化に対応するためには、AIを利活用した課題解決型人材の育成が急務です。

――そういった人材を育成するためには、どのような教育を実践していけば良いのでしょうか?

まだこれといった教育プログラムや指導法は定まっていないように感じています。私の運営するプログラミング教室では、データの利活用からビッグデータに触れるところまでは、学習指導要領に沿った小中高の一貫カリキュラムを確立しています。さらに上級レベルの生徒には、一部社会人向けのAI教材を取り入れるなど、今社会に求められる人材像を想定して、ひと繋がりのカリキュラムを作成しています。

AIは身近なものになりつつありますが、しかし、ここからAIを利活用する段階に上がるには、未だ大きなハードルがあることは否めません。

私は各分野におけるAIの利活用の仕方やAIサービスの研究開発自体は、大学等の高等教育に委ねるべきだろうと考えています。例えば、東京大学の「数理・データサイエンス教育プログラム」や、関西学院大学の「AI活用人材育成プログラム」などは、AIシステムの構築などAIを利活用することが想定されており、専門性も網羅されていて、良質なプログラムと言えます。

目まぐるしく変化する社会にあわせて、今後も教育プログラムや制度も柔軟に対応していくことが求められると思います。

(冒頭の写真はイメージ)