若い太陽のフレアが地球上の生命誕生をもたらしたか 横国大

横浜国立大学などの研究グループは2日、初期地球大気を模したガスに高エネルギー陽子線を照射したところ、アミノ酸やカルボン酸が多く生成することがわかったと発表した。従来、地球上での生命誕生に必要なアミノ酸などの有機物は、初期地球大気に放電(雷)や紫外線を加えてもほとんどできず、隕石などにより地球外から持ち込まれたと考えられてきた。今回の研究で、地球外から供給されるよりも、若い太陽が発する大量の高エネルギー粒子による生成の方が多かった可能性が示された。

近年の天体観測から、太陽に似た恒星が激しい活動(フレア)により大量の高エネルギー粒子を放出していることがわかり、若い太陽も激しい活動を起こしていた可能性が考えられる。そこで、太陽フレアによる高エネルギー粒子が初期地球大気に有機物をどのくらい生成できるのかを、東京工業大学にある加速器を用いて実験した。その結果、メタンが二酸化炭素の1/100しかなくてもアミノ酸を生成し、多様なカルボン酸も生成することがわかった。

現在、大きな太陽フレアが起きると、人工衛星に不具合が生じてカーナビなどに影響が出たり、通信障害が生じたり電力供給に問題が生じるなど、われわれの生活に大きなダメージを与えることが危惧されている。しかし、初期の地球においては、激しい太陽フレアが生命の誕生を促したことが考えられる。

太陽フレアが初期地球に与えた影響は他にも考えられる。例えば、若い太陽は暗かったため、初期地球は凍り付いていたはずだという「暗い太陽のパラドックス」があるが、太陽からの高エネルギー粒子により一酸化二窒素などの温暖化ガスが生成され、これが地球の凍結を防いだ可能性が考えられる。そうした可能性についても今後、実験により検証していくという。

画像提供:アメリカ航空宇宙局(NASA)