レーザーにより氷の結晶を狙った時間・場所に発生させる技術を開発 大阪大など

レーザーにより氷の結晶を狙った時間・場所に発生させる技術を開発 大阪大など

大阪大学と奈良先端科学技術大学院大学の研究グループは、レーザー照射により狙った時間・場所に様々な形状の氷結晶を発生させる技術を開発したと発表した。氷が関与する様々な自然現象・生命現象のメカニズム解明や関連工業分野への応用が期待できる。米国化学会の速報誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」で論文が公開された。

氷の結晶化は、日常に目にする自然現象で、そのメカニズムを解明することは様々な科学・工業分野においての重要課題とされる。しかし、結晶化現象はランダムに起こるため、氷の結晶が発生する時間や場所を予測して精密な計測を行うことは困難であった。

研究グループは、氷点下の水に、超短パルスレーザーを集光照射して刺激することで、集光領域の近傍から氷の結晶化が始まることを発見した。超短パルスレーザーのパルス時間幅は1×10-15~1×10-12秒程度である。この手法により光エネルギーを時間的・空間的に凝縮することが可能になり、微小領域に極短時間の刺激を与えることができる。

この技術を使って純水だけでなく、寒冷地の植物からの抽出液や、不凍タンパク質を添加した水溶液など、様々な溶液条件で氷結晶化の時空間制御が実現でき、溶液条件に応じた形状の氷結晶の発生が確認された。さらに、最適条件ではわずか一発のレーザー照射のみで氷の結晶を発生させることができるため、マイクロ秒・マイクロメートルオーダーという極めて高い時間空間分解能で氷の結晶化を光学顕微計測することに成功した。

レーザーで発生させた様々な形状の氷結晶

この研究により様々な溶液においての氷結晶の形成過程を精密に調べることが可能になり、氷結晶化の詳細なメカニズムの解明に寄与できる。それにより、気象学、地球・惑星科学などの氷が関与する様々な自然科学分野や食品・細胞の冷凍保存などの関連工業分野の発展につながることが期待される。

画像提供:大阪大学(冒頭の写真はイメージ)