酢酸菌由来の酵素を用いた高出力バイオ燃料電池を実現 京大

京都大学などの研究グループは、食酢の製造に用いられる酢酸菌由来の酵素を用いた高出力で高効率なバイオ燃料電池を実現した。従来の10倍以上の出力を持ち、新たなバイオエタノール利用技術として社会的な波及効果が期待される。この研究成果は5月30日、国際学術誌「ACS Catalysis」にオンライン掲載された。

低炭素社会の実現においては、化石燃料に代わる再生可能エネルギーの普及が重要だ。代替燃料から効率良く電気を取り出すために、多様な触媒の研究が進められている。触媒の多くは高温高圧の条件を要することや、余計な副生成物を生じるといった課題がある中で、常温常圧中性で高い活性を示す生体触媒が注目されている。

酢酸菌は、酢酸発酵時にアルコール脱水素酵素(ADH)およびアルデヒド脱水素酵素(ALDH)を用い、エタノール→アセトアルデヒド→酢酸という2段階の反応を行う。同研究グループはこれまでの研究で、ADH と ALDH がともに電極に直接電子が移動するユニークな特徴を明らかにしていた。この反応はDET型反応と呼ばれ、優れたエネルギー変換効率と環境適合性を持つ。しかし、ADHとALDHの立体構造の詳細が明らかになっておらず、電極表面の反応効率を最大化する設計が困難だった。

今回、大阪大学のクライオ電子顕微鏡を用い、ADHとALDHの立体構造を初めて解明し、それぞれの機能と相互作用を明らかにした。さらに、ADH と ALDH を同じ電極表面で組み合わせ、2 酵素の濃度比を制御し、数理モデルに基づいて効率の最適化を試みた。その結果、出力密度が従来の10 倍以上を記録し、さらにエタノールから酢酸への変換における電解効率がほぼ100 %に達し、副反応がほぼ生じなかった。

この成果は、社会実装の進むバイオエタノールを原料として利用でき、効率的なエネルギー変換と物質生産を同時に行う装置の開発に繋がる。また、この反応は非生体触媒の分野でも広く活用できるため、生体を模倣した反応の優れた効率を実証しただけでなく、複合的な触媒の設計を加速し、再生可能エネルギーの普及と持続可能な低炭素社会の実現に貢献すると期待される。

アルコール脱水素酵素 ADH とアルデヒド脱水素酵素 ALDH による生物電気化学カスケード反応

画像提供:京都大学(冒頭の写真はイメージ)