太陽光を利用した新しい医薬品の合成法を開発 関西学院大ほか

関西学院大学と広島大学の研究チームは、太陽光に反応する触媒を用いて医薬品などの合成を簡単に行う方法を開発した。パラジウムなどの希少な遷移金属も不要で、加熱することなく室温で合成できる。この研究成果は、5月31日に「Science Advances」誌にオンライン掲載された。

2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸および鈴木・宮浦クロスカップリング反応(異なる2種類の構造を繋ぐ反応)によって、医薬品や電子材料などを簡単に合成できるようになった。しかし、この反応には希少なパラジウムを触媒に用いる必要があり、さらに加熱が必須であった。今回の研究チームの筆頭著者である関西学院大学の白川英二教授は、2010年に遷移金属を用いないクロスカップリング反応を世界で初めて見出した。その反応は「電子触媒」反応と名付けられたが、100度以上の高温が必要であった。

今回、太陽光に反応する「光レドックス触媒」と呼ばれる電子触媒を用いることで、加熱を必要としない、室温でのクロスカップリング反応の開発に成功した。加熱を必要としない理由を調べたところ、これまで、一重項電子励起状態(シングレット)が鍵であるとされてきた常識を覆し、三重項電子励起状態(トリプレット)が反応の鍵になっていることを発見した。

化学技術の革新を通じて人と環境の健康・安全を目指し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目的とする世界的な活動である、グリーンケミストリーやサステイナブルケミストリーの観点から、電子触媒は遷移金属触媒よりも望ましいが、これまでは100℃以上の高温が必要であった。今回の方法によって電子触媒の利用範囲が広がり、将来的には太陽光を利用した工場レベルでの合成プロセスが実現され、持続可能な社会の発展に貢献することが期待される。

(写真はイメージ)