東京湾の希少鯨スナメリ、市民調査で生態を解明 東京海洋大

東京海洋大学は5月30日、市民科学を利用した、東京湾における希少種のクジラ、スナメリに関する調査によって、その生態の一端が明らかになったことを発表した。この研究成果は国際学術誌に掲載された。

スナメリ(Neophocaena asiaeorientalis)は日本沿岸の浅海域に生息する小型のハクジラ類。人間社会の影響を受けやすく、IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。小型で目立たず、吹気も不明瞭なことから、目視調査は困難だ。特に東京湾では空域制限があり空撮での調査は難しく、同大では独自に練習船などを用いて3年以上目視調査を続けたが、スナメリはほとんど発見できなかったという。

研究グループは、東京湾内でのクジラ・イルカの目撃情報の提供を市民に呼び掛けた。2024年7月から2025年2月までに寄せられた41件の目撃報告のうち、27件がスナメリと確認された。そのうち約85%が2頭以上の群れで行動しており、東京湾ではスナメリが複数の個体で暮らしている可能性が示された。浦安市から市原市沖に多くの目撃が集中しており、東京湾奥部が重要な生息海域だと考えられる。また、2024年9月には、30頭以上のスナメリが一度に確認され、東京湾内では史上最多、日本国内でも3番目に多い記録となった。

この研究によって、都市に暮らすスナメリの生息実態がSNSの活用によって明らかになり、市民参加による科学調査が絶滅危惧種の保全に果たす役割の大きさが示された。今後も情報収集を続け、東京湾内におけるスナメリの姿をより詳細かつ科学的に明らかにし、種の保全につなげていくとしている。このプロジェクトは継続中で、引き続き情報提供の協力を呼び掛けている。

東京湾内での鯨類の発見情報提供を依頼するポスター
首都圏の人口密度と東京湾内におけるスナメリの報告件数

画像提供:東京海洋大学(冒頭の写真はwikipedia)