花粉の飛散がピークに 日本の花粉症対策と林業を考える

スギ花粉の飛散がピークを迎えている。3月下旬からはヒノキの花粉も加わり、花粉症の人にとってはつらい1カ月となりそうだ。環境省によると日本人の3人に1人がスギ花粉症と推定されており、近年では小さな子どももかかるようになった。現在、国で行われている花粉症対策の施策や、林業の課題について概観する。

花粉症の原因となる花粉の削減に向けて

花粉症の原因となるスギやヒノキ花粉の飛散元となるのは、人工的に植林されたスギ林やヒノキ林で、面積にするとスギ林が約450万ヘクタール、ヒノキ林が260万ヘクタールで、合わせると日本の森林面積の約3割にもなる。

国としても花粉症を含めたアレルギー疾患対策には力を入れており、2023年5月の花粉症に関する関係閣僚会議において、「花粉症対策の全体像」をとりまとめている。この中で、10年後に花粉発生源となるスギ人工林の約2割減少を目指すことを決定した。それに伴い、林野庁では現在、花粉を飛散させるスギ人工林の伐採・利用と植替えの促進、花粉の少ない苗木の供給拡大、花粉飛散抑制技術の開発に取り組んでいる。具体的には「花粉発生源対策推進事業」として、効果的な花粉発生源対策の実施に向けた調査・普及、花粉の少ない森林への転換促進に予算を当て、スギ苗木の年間生産量に占める花粉症対策に資する苗木の割合の増加を目指す。2033年度までに、スギ人工林の伐採を年間約7万ヘクタールにまで増加させるとしている。

「花粉の少ないスギ」とは?

では、林野庁の取り組みにある「花粉の少ない苗木」とは一体何なのか。実は30年以上前から森林研究・整備機構では、花粉の少ない品種の開発に取り組んでおり、1996年度から2021年度末までに、少花粉スギ147品種、少花粉ヒノキ55品種を開発している。

一般によく言われる無花粉スギと少花粉スギの違いは、無花粉スギは雄花をつけるが花粉を全く出さないのに比べて、少花粉スギは雄花を全くつけないかごくわずかしかつけず、ほとんど花粉を出さないのが特徴だ。この花粉の少ないスギやヒノキの苗木を、通常のスギやヒノキを伐採した跡地に植えることで、花粉の少ない森林に転換しようとしている。

間伐や植え替えを推進する課題

花粉症対策の全体像の中では、「林業の生産性の向上及び労働力の確保等」の取り組みを推進することについても言及しているが、日本の林業従事者数は減少傾向にあり、2000年に6万8千人だった従事者は2020年には4万4千人と、20年で2万人程度減少している。また、高齢化率は全産業が17%なのに対し、林業は25%と高く、高齢の従事者が引退すると従事者数が一気に減少する恐れがある。さらに、平均給与は全産業の平均より約100万円程度低いにも関わらず、災害発生率は全産業の約10倍という危険な仕事となっており、林業をやりたいと思える待遇改善と安全な労働環境の実現が急務だ。

一方で、2003年から始まった「緑の雇用」事業によって、新規就業者を対象にした研修支援や就業相談が活発になっている。事業開始前には年間2000人程度だった新規就業者数が、事業開始後には年間で1000人程度増え、全体で3200人程度が林業従事者として就業しているのも事実だ。林業大学校が全国各地に新設されたりと、少しずつではあるが注目されている業界でもある。

しかし、新規就業者が増えていても引退などで減っていく従事者数の方が多いため全体の数は増えていない。その中で、10年で人工林を2割削減するという目標をどのように達成するのか、生産性の向上が課題となっている。

生産効率を上げる新しい技術

林業の安全性を向上させ、かつ生産効率をあげるためには、新しい技術の導入が不可欠だ。日本の山はもともと急峻で、機械を入れるための林道を作るのも難しく、植林から伐採までの木材を生産する過程でコストがかかる。そこで様々なコストを減らすための努力の一つとして、近年ではドローンを活用して、苗木を山の上まで運搬する取り組みが本格化している。2023年には林野庁によって「ドローンを活用した苗木等運搬マニュアル」が整備、公開され、これから実用化していく段階に入っている。

もともと木材の生産のために優良な樹種として植えられたスギやヒノキ。外国産材に押されて売れなくなり、その結果、山に放置されるようになった。今では花粉を出す元凶として見られることもあるが、建築材料としては価値のあるものだ。ただ花粉が飛散するから伐るべきものという捉え方ではなく、素材として売れる木材を育てるためにどう森林を管理していくか、その過程で人間とどう共存していくかなど、花粉症を通して人工林のあり方を見直してもいいかもしれない。

(写真はイメージ)