水素の高効率製造法を開発、室温・小型装置でも可能に 広島大

広島大学は17日、高効率の水素製造法を開発したと発表した。従来の巨大施設は不要で、小型装置でCO2の発生もない画期的な技術だ。この研究成果は英国王立化学会発行の学術誌に掲載された。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、水素はCO2を排出しないクリーンなエネルギーとして着目されている。しかし、現在流通している水素の95%は天然ガスや石炭といった化石燃料を原料に製造されている。その製法には50~1000℃の高温の過程が必要で、水素と同時に大量のCO2が発生するため環境への負荷が大きい。このため、エネルギー消費が少なくCO2が発生しない水素製造法が望まれていた。

研究グループは、メカノケミカル法により、室温で効率的に水素を製造する技術を発見した。メカノケミカル法とは、物質に粉砕などの機械的エネルギーを加えることで、その物理化学的性質や化学的性質を変化させる手法である。この方法では、硬質ボールを用いたボールミルという装置に水とともに触媒となる金属粉末を入れ、粉砕することで水素を生成する。実験の結果、チタンを使うことで特に高い効率が得られることが明らかになった。この反応は、30~38℃という室温付近で進行する。特に容器内でボールが衝突する際にホットスポットと呼ばれる高温・高圧の状態が一瞬発生し、これが水素の生成を加速させる。この方法では、純度99%以上の水素を、CO2を一切排出せずに製造できることが確認された。

この技術のもう一つの特長は、海水や雨水といった低純度の水を使用しても高効率に水素を生成できる点だ。また、酸素が発生しないため、水素と酸素を分離する手間がかからない。これにより、従来の水素製造技術に比べ、小型装置でも安全かつ効率的に水素を製造できる。

今回の研究により、従来は高温・巨大施設が必要な水素の製造が室温・実験室でも可能になった。また、CO2を排出せず海水からも効率的に水素が製造でき、必要な場所、必要な時に水素製造が可能となった。今後はさらに高効率な反応条件を探し、実用化を踏まえて展開していくとしている。

遊星型ボールミルを用いたメカノケミカル反応による水素生成の模式図。右は水の相図(状態図)。点線で囲った領域は、超臨界状態の水、超臨界水を示す。

画像提供:広島大学(冒頭の写真はイメージ)