[書評]「僕には鳥の言葉がわかる」観察から生まれた動物言語学

本著は動物言語学者・鈴木俊貴氏の科学エッセイで、鈴木氏の今までの研究について、ユーモアあふれる言葉で書かれている。大学の卒業研究は、シジュウカラの言葉を理解するため、軽井沢の山荘に3か月泊まり込みの観察。修士課程では卒業研究をもう一度やり直すべく、森中のシジュウカラの足に目印をつけて1羽ずつ判別できるようにして再び観察。次は子育てをモニタリングすべく、40個もの巣箱を作製・設置し、つがいとヒナの様子を観察。本著を読むと、「観察」という言葉が何回出てきたのかというくらい、彼の研究はすべてが観察から始まる。それは、人間以外には言葉でコミュニケーションをとると考えられていなかったこの世界に「動物言語学」という新たな領域を生み出すことになった鈴木氏の、「シジュウカラのことを知りたい」気持ちの表れなのだと感じる。

彼は軽井沢の森にいるシジュウカラを模様で区別できるほど観察を重ね、鳴き声を聞くと何を言っているのかまでわかるようになっていた。それは天性の才能ではなく、観察によって集めたデータを客観的に分析した結果だ。

研究の始まりはシジュウカラへの好奇心と、とてもシンプルな問い。「人間の言語でこうなら、鳥もこうではないか?」という、その辺に転がっているありふれた法則を鳥の世界に当てはめてみようという冒険心、それを証明しようと組み立てた論理的な仮説と実験方法。そして我慢強い観察による膨大な収集データ。これらの研究を支えるシジュウカラへの愛と動物行動学界隈の研究者への熱いリスペクト。すべてが合わさった時、世界中の研究者をあっと言わせる研究へとつながっていった。

書籍全体を通してシジュウカラの話ばかりなので、鳥好きにはたまらないことは言わずもがな。しかしそれ以上に、新しいことを発見しようとする人々への研究の手引きにもなるだろう。目で見て確かめる、ただそれだけのことだが、それを人が納得する方法で行い結果を出したときに、自分が見ている新しい世界を他の人にも見せてあげることができる。それが研究をする醍醐味なのだと、彼の研究を通して感じることができるはずだ。

『僕には鳥の言葉がわかる』
著者:鈴木俊貴
発行日:2025年1月23日
発行:小学館

(冒頭の写真はイメージ)