
超小型人工衛星「Ninjasat」が科学観測に成功 宇宙観測の新たな一歩へ
理化学研究所(理研)などの国際チームがキューブサットと呼ばれる超小型人工衛星で、一定の時間間隔で規則正しく爆発を起こす奇妙な中性子星の特徴を明らかにした。キューブサットでの世界初となる本格的な研究成果だ。日本天文学会欧文誌『Publications of the Astronomical Society of Japan』に5月14日付で掲載された。
これまでの研究では、大型で高価な科学観測衛星が使われてきたが、最近では安くて早く打ち上げることのできる小型の衛星が注目されている。なかでもキューブサットは、10cm角の立方体を1つのユニットとして作られる超小型衛星で、大学やベンチャー企業も開発に参加しやすい特徴がある。しかし、これまでのキューブサットの多くは、通信や実験の試行にとどまり、科学的な発見をするまでには至っていなかった。
キューブサットX線衛星「NinjaSat」はSpaceX社のFalcon 9ロケットで2023年11月に打ち上げられた。6ユニットから構成され、X線をとらえる「ガスX線検出器(GMC)」と、放射線を測る「放射線帯モニター(RBM)」を2台ずつ搭載している。国際共同研究グループは、2024年2月に観測を開始するに当たり、当初計画していた観測を全て取り止め、2日前に発見されたばかりの新天体を25日間に渡って占有観測した。その結果、その中性子星は限界質量に近く、連星系を成している恒星は水素の外層が大きく削り取られた過去がある、かなり特殊な系であることを解明した。
これまで1年4カ月のNinjaSatの運用で、ブラックホール、中性子星、銀河など28個のX線天体を観測することができた。超小型衛星でも運用や観測の工夫を凝らすことで、優れた科学観測が実現できることを実証したと言えよう。国の宇宙機関が主導する大型の衛星と、それを補完する超小型衛星での観測を組み合わせることで、今後の宇宙開発や天文学の可能性を大きく広げるものとなるだろう。
写真提供:理化学研究所