
『盆栽から人生を学ぶ ― 小林國雄の盆栽園』【前編:インタビュー:盆栽家 小林國雄】
日本で3本の指に入ると言われる盆栽家、小林國雄氏の春花園BONSAI美術館(東京都江戸川区)の前には沢山の国旗が飾られている。春花園の中に足を踏み入れると、庭に数々の立派な盆栽が並び、数寄屋風の日本建築、錦鯉が泳ぐ池があり、春には桜が咲き誇る、まるで小さな楽園のようだ。
ここを訪れる人は殆どが外国人。日本建築の床の間には掛け軸と盆栽が並べられ、その前で正座し黙想している人々の姿が印象的だった。
小林氏はその庭園で一人黙々と盆栽の世話をしている。
その物静かな姿からは、まさかイタリアやアメリカ、アジアの世界各国からの招待を受けて盆栽パフォーマンスを披露し、十数人の弟子を持つ師匠であり、盆栽界で広く知られる盆栽家だとは一瞬気が付かない。
毎日朝から晩まで盆栽の世話をするのが生き甲斐だという小林氏。
この記事では、小林氏に盆栽について伺った話と、盆栽作り体験について紹介していく。
――― 盆栽を始められたきっかけは?
親が園芸をやっていましたが、自分が盆栽をやろうと思ったのは、盆栽展で一つの作品に出会ったときだった。盆栽の力強さに衝撃を受けて、夢中で自ら学びこれまで続けてきた。
ある展覧会に飾るために盆栽を移動させいていた時に、世話を人に任せたために、大変貴重な盆栽を枯らしてしまったことがあった。そのことを通して、盆栽界から締め出されたり、裁判にかけられたりもした。それでも今まで妻と共に続けてこられたのは、やはり盆栽が好きだからだと思う。
――― 盆栽を育てる上で大切なことは?
盆栽は芸術であり、一番大事なのは気品だと思う。
私も沢山の盆栽を育ててきたが、また沢山の盆栽も枯らしてきた。その経験から、どのようにすれば育つのかを学んだ。頭で覚えることもあるが、全ては手で覚える。どれだけ手をかけたか、どれだけ手で学んだかだと思う。
――― 好きな盆栽はありますか?
一番好きなのは梅の花。桜のように華やかではないが、小さくじっと咲く姿が美しい。梅は寒い中最初に咲くといわれ、昔から日本で親しまれてきた花だ。
――― 多くの伝統技術が後継者問題で悩む中、小林さんの元にはお弟子さんが沢山いらっしゃいますね?
盆栽は夢がある。やはり経済が成り立たないと夢がないと思うが、その点、盆栽は良いものができると数千万で売れたりする。好きなだけじゃなく生計も立てられるのが魅力じゃないかな。
弟子は半分以上が外国の人。弟子たちは基本3年ほど、泊まり込みで、衣食住を共にして学ぶ。生活を学ばないといけない。そのようにして独立した子達が、外国や日本各地で活躍しているのが嬉しいね。
――― 最後に、小林さんにとって盆栽とは何ですか?
自分をつくってきたのは、盆栽を通して出会った人達だと思っている。景道(装飾空間に、盆栽・水石・山野草・掛軸等を用いて自然や季節を飾ること)を教えてくれた先生、ビジネスを教えてくれた人など、多くの出会いがあった。
私は本を沢山読むけれども、本からも美について学んだ。裁判で関わった人も、艱難を通して学ばせてくれた人だと思っている。
また、盆栽は手をかけた分応えてくれる。盆栽から人生を学ばせてもらっていると思う。
――― 素敵なお話ありがとうございました。





