感謝を記録するだけで「働く意欲」が高まる 立命館大などが実証

日々の「ありがとう」を書き留めるだけで、仕事への意欲が高まる──そんな研究成果を、立命館大学と情報通信研究機構(NICT)、NTTデータ経営研究所の共同研究チームが発表した。働く人が日常で感じた感謝を12日間記録したところ、仕事に前向きに取り組む心理状態「ワーク・エンゲイジメント」が向上したという。研究成果は国際学術誌『BMC Psychology』に掲載された。

研究チームは、日本の企業に勤める社会人100人を対象にオンライン実験を実施。参加者を、日々の感謝を記録する「感謝日記群」と、日常の出来事を記録する「日常日記群」に分け、介入前後で心理状態の変化を比較した。その結果、感謝日記群では、仕事に熱中する度合いなどの指標が有意に上昇した。日記の内容を分析すると、「ありがとう」「助かる」「同僚」「家族」といった、周囲の支援に関する前向きな言葉が多く見られたという。一方、日常日記群では「寒い」「終わる」など中立的・否定的な表現が目立った。

研究チームは、感謝を意識して記録することで、上司や同僚、家族からの支えなど「仕事の資源」に気づき、それが働く意欲を高めた可能性があると分析する。研究者は「感謝日記は特別な道具や費用を必要とせず、誰でも始められる。職場のメンタルヘルスや生産性の向上に役立つ可能性がある」と指摘している。

日本の働きがいは国際的に見ても低く、米ギャラップ社の調査(2022〜2024年)では140カ国中135位と最下位水準だ。今回の成果は、働きがいを高めるためのシンプルで科学的な方法を示した点でも意義が大きい。感謝に注意を向け、自分が支えられていることに気づく──その小さな行動が、仕事への前向きな姿勢につながることを裏づけた形だ。

(写真はイメージ)