
3分半の軽運動で子どもの認知機能が向上 早大が確認
早稲田大学の研究グループは、3分30秒の軽い運動を1回行うだけで、子どもの認知機能と気分が一時的に向上することを明らかにした。5分以下の低強度運動で認知機能の改善を示した研究は世界初であり、学校現場への応用が期待される成果だ。
研究を行ったのは、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の内藤隆氏らのグループで、小学5年生から中学2年生までの31人を対象に実験を実施した。参加者は、15分間座って過ごす「安静条件」と、座位の途中に3分30秒の軽運動を行う「運動条件」の両方を体験し、前後で認知機能と気分の変化を測定した。
運動プログラムは、ストレッチや片足バランス、手指の運動など、特別な道具を使わず教室内で実施できる内容で構成された。その結果、運動後には注意や行動の制御に関わる「抑制制御」が向上し、課題への反応時間が短縮した。また、快適度が高まり、長時間の座位による覚醒度の低下も抑えられた。
近年、子どもの運動不足や座位時間の増加、学習意欲の低下やメンタルヘルス不調が社会的な問題となっている。本研究は、授業開始時や合間に数分間の軽運動を取り入れることで、学習効率や心身の健康を高められる可能性を示した点で意義がある。
今後について研究グループは、今回対象とした小学5年生から中学2年生以外の年齢層でも同様の効果が得られるか、また、数カ月間にわたり継続的に実施した場合、認知機能や気分にどのような変化が生じるのかを検証する必要があるとしている。
さらに、学校や塾での実践を広げるため、教育現場で導入しやすい動画やウェブサイトなどの支援ツールの開発も進める方針だ。低強度で安全かつ簡便という特性を生かし、認知機能の低下が懸念される高齢者や、長時間座位を続けがちなオフィスワーカーへの応用も視野に入れ、研究を発展させていくとしている。
研究成果は12月5日付で国際学術誌『Scientific Reports』に掲載された。
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