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母乳育児に悩んだ一人の母から、2万人に寄り添う助産師へ

出産後、母乳で子どもを育てたいと願う女性は多い。一方で、母乳不足などから授乳がうまくいかず、子育てをつらく感じてしまうことも少なくない。広島県廿日市市で産前産後の母乳ケア専門の助産院を営む悦喜桂子さん(65)は、SNSなどを通じて、子育てに奮闘する女性を支えている。かつて悦喜さん自身も、母乳育児に悩み苦しんだ一人だ。その経験を原動力に、学びを重ねながら様々な形で支援を続ける悦喜さんの取り組みを取材した。

SNSを通じて母親の悩みに寄り添う

2020年、コロナ禍で不安な思いをしている母親が安心して子育てできるよう声を届けたいとインスタグラムを開設。フォロワー数は現在約2万人にのぼる。開設当初から平日毎朝5分間のライブ配信を続け、母乳育児や離乳食、寝かしつけの仕方など、育児全般に関する困りごとや寄せられた質問に答えている。あわせて、育児に疲れたときに「ほっこりゆるんで笑顔になれる言葉」を届けることも大切にしている。定期的にオンライン座談会を開き、母親同士が思いを共有できる交流の場も提供している。

自身の経験をきっかけに助産師の道へ

悦喜さんの原動力は、自らの子育てで経験した困難と感動だという。長男の出産後、母乳で育てようとするものの母乳不足や乳腺炎に苦しみ、精神的に追い詰められた。その時に出会った桶谷式の助産師のケアで、徐々に母乳不足が解消。プロのサポートを受けることで子育てを心から楽しめるようになり感動を覚えた。

この経験から、母乳育児に不安を感じ苦しんでいる女性の助けになろうと助産師になることを決意したという。2人の子どもを育てながらも早朝4時に起きて勉強し、34歳で専門学校に合格。一回り年下の学生らと勉学を共にし、助産師免許を取得。その後は総合病院の産婦人科で17年間勤務した。病棟科長としても活躍する中、1年間休職して東京で桶谷式母乳ケアの研修を受け資格を取得するなど熱心に学び続けた。

助産院の開業。2万組超をサポート

2012年、51歳で「えつき助産院」を開業。心に寄り添うサポートで親しまれ、のべ2万組以上が来院する。母乳ケアのほか、楽にできる抱っこやおんぶの方法も教える。

悦喜さんの取り組みは、社会からも高く評価されてきた。22年には、地域社会で女性の生活を向上させるために貢献してきた女性をたたえるソロプチミスト・ルビー賞を受賞。さらに25年には、看護や助産の分野で功績のあった人に贈られる、ひろしまナイチンゲール賞も受賞している。

「いくつになっても新しいことに挑戦し、学ぶのは楽しい。いいと思うことは積極的に取り入れたい」と話す悦喜さん。昨年から新たに生成AIの活用法を学び、インスタライブの内容やブログの記事作りなどに役立てている。

今後は、子育てや母乳トラブルなどの悩み別にいつでも対応できるオンラインコンテンツの作成も検討しているという。「悩んでいるママたちがもっと子育てを楽しめるよう、様々な方法で支援を続けていく」と意気込みを語ってくれた。

いくつになっても学び、挑戦し続ける姿からは、大きなパワーを感じた。同じく二児の母である記者自身も「誰かのために何かしたい」「新しいことに挑戦したい」と力をもらい、背中を押された。

<参考リンク>
えつき助産院