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太平洋の海洋秩序を守る 日米豪、協力強化の動き

日本の安全保障で近年注目される南西諸島の陰で、太平洋側の島々と海域でも防衛態勢の強化が進んでいる。小笠原諸島から南鳥島、グアム、パラオ、さらに豪州へと連なる広い海域は、中国の海洋進出と、日米豪の防衛協力強化の動きが交錯する海域となっている。ここ1カ月の公的発表を見ても、米軍は13日、北マリアナ諸島(CNMI)へのスーパー台風接近に備え、統合部隊の即応態勢を取る方針を公表した。さらに日本は18日、豪州との防衛協力強化を打ち出した。派手な軍事ニュースではないが、太平洋での備えは着実に積み上がっている。

この地域では、米国がグアムを中核拠点としつつ、サイパン、テニアンなど北マリアナ諸島への機能分散を進めてきた。米太平洋空軍(PACAF)はテニアンを代替飛行場・演習拠点として整備する方針を公表しており、中国のミサイル戦力拡大を受け、一極集中型の基地運用では脆弱との認識が背景にある。グアムだけに依存せず、複数拠点を結ぶ分散運用へ移っているのである。

一方、日本も太平洋島嶼国との防衛協力を段階的に拡充してきた。防衛省は2月19日、東京で第3回「日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD)」を開催し、海洋安全保障、人道支援・災害救援、人材育成などで協力を深める方針を示した。軍事拠点整備を前面に出すよりも、制度整備や能力構築、信頼醸成を重ねる関与が特徴だ。太平洋島嶼国が中国、米国、日本、豪州など複数国との関係を見極めながら行動する中、日本は比較的受け入れられやすい形で関与を広げている。

加えて4月18日の日豪会談では、海上自衛隊護衛艦「くまの」艦上で記念式典が行われ、日本の「もがみ」型護衛艦を基礎とする豪州汎用フリゲート事業について、3隻分の建造契約が締結され、計画は建造段階へ移った。両国は協力覚書(通称「もがみメモランダム」)に署名し、艦艇建造だけでなく、豪州国内での維持整備基盤や造船能力の構築でも連携を確認した。これは単なる装備移転ではなく、日豪が長期的に防衛産業基盤を共有する動きといえる。豪州は南太平洋の安定を支える中核国であり、その海軍力強化は地域全体の抑止力にもつながる。

ただし、日本自身の課題も残る。小笠原諸島や南鳥島は日本のEEZと資源権益の基点でありながら、本土から遠く、安定した航空運用や迅速な部隊展開は容易ではない。南西諸島では沿岸監視部隊や地対艦ミサイル部隊の配備が進む一方、小笠原方面では同規模の常設体制は限定的だ。監視、補給、防空、滑走路維持の面でなお空白がある。中国が外洋での活動を常態化させれば、日本の権益への圧力が強まる恐れもある。

今後の鍵は、監視網・同盟連携・分散拠点を組み合わせる「ネットワーク型の防衛」にある。日本は小笠原方面の監視強化、南鳥島の拠点機能向上、無人機や衛星による継続監視を急ぐべきだろう。同時に、豪州との艦艇協力を深め、米軍のマリアナ方面での態勢強化と歩調を合わせ、島嶼国への防災・海上保安支援も重ねる必要がある。小笠原から豪州へと続く海の安定は、遠い島々の問題ではない。日本が太平洋国家として海洋秩序を守れるかを問う試金石といえる。

もがみメモランダムに署名する、小泉防衛大臣(右)とマールズ豪州副首相兼国防大臣(左)
出典:防衛省・自衛隊ウェブサイト(https://www.mod.go.jp/j/approach/exchange/area/2026/20260418_aus-j_a.html)、PDL1.0(https://www.digital.go.jp/resources/open_data/public_data_license_v1.0

(冒頭の写真はイメージ)