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中東のシリコンバレー テルアビブ

イスラエル。地中海に面し、人口834万人程を擁する、日本の四国くらいの小さな国だ。最近の日本での報道を見ると、「紛争」「宗教対立」といった怖い印象を持つ人が多いかもしれない。現に外務省が公開する危険情報の地図では、12月1日時点で全域が黄色(「十分注意してください」の意)で覆われ、更にいくつかの地域では渡航中止勧告が出ている。実際、11月中旬に首都テルアビブに訪れた際に随分な目に逢ったわけだが、これはまた別の機会に触れるとして、ただ危険だという先入観だけで終わってしまうには、いささか勿体無ない国でもある。今回は、この国のあまり知られていない側面を紹介しよう。

近年、イスラエルの地中海や死海沿いの地域は欧米人に人気の一大リゾート観光地として知られているが、観光業だけではなく、現在は技術スタートアップ企業大国としても名を上げつつある。実際、アメリカ以外の国の中では、NASDAQに上場している企業が最も多く、スタートアップ企業への人口一人あたりの投資額が世界一高い国でもあり、イスラエルの経済の中心地テルアビブは「中東のシリコンバレー」とも呼ばれている。イスラエルで生まれた著名なスタートアップ企業を見てみると、グーグルに買収された地図アプリ「ウェイズ(Waze)」、車の運転中に前の車に近づきすぎると警告をしてくれるモバイルアプリ「アイオンロード(iOnRoad)」、そして、国際的に利用されるVoIP(インターネットなどを経由した音声通話技術)アプリ「バイバー(Viber)」などがある。

なぜ、イスラエルの人は起業家精神に富み、ITの素養があり、英語が堪能で世界と対等に渡り合えるのだろうか。まず挙げられるのが、イスラエルの人は幼い頃から英語を学ぶためバイリンガルが多い点だ。また、この国には兵役の義務があるため、女性も含めて国民の多くが大学進学前に軍隊に入隊する。軍隊では、戦闘時や軍の通信の重要な要素であるテクノロジーを学び、若くして専門家になることが可能だ。もう一つ考えられるのが、ユダヤ人の「一日一生」の精神である。イスラエルの人口の75%を占めるユダヤ人は、長く世界で迫害されてきた歴史を持つ。現在も紛争の渦中にいる彼らは、スタートアップというリスクを取り、毎日悔いなく生きるという精神があるのかもしれない。若い時期に軍隊でテクノロジーとリーダーシップを学び、それを生かして新しいことにチャレンジするイスラエルの人々。この国の今後の新しいスタートアップにも注目していきたい。

(写真はイメージ)