2016年の花粉症 シーズン前の対策(3)~治療&対症療法 【対症療法編】

花粉症発症の仕組みやタイプの違い、セルフケアについて過去2回の記事で触れてきたが、今回はより具体的な処置について紹介したい。

花粉症の根治療法は時間がかかるので、対症療法が行われることが多いが、近年、根治療法が再び脚光を浴びている。主なものは以下の通り。

1)対症療法
・薬物療法:内服、点眼、点鼻
・手術療法:レーザーなど

2)根治療法
・皮下免疫療法
・舌下免疫療法

今回は、まず対症療法の「薬物療法」と「手術療法」について紹介する。

【薬物療法】:内服、点眼、点鼻
最適な薬物療法は、花粉症のタイプによって大きく異なるので、自分のタイプを知った上で、医師とよく相談することを勧める。また、花粉症の治療薬は内服薬や外用薬など100種類以上あるので、毎年、使った薬物と効果・副作用を記録しておき、自分に最適な薬物療法をみつけていく工夫が必要だ。

花粉症のタイプは大きく分けて3つ。「くしゃみ・鼻汁型」、鼻づまりのある「鼻閉型」、ふたつを合わせた「混合型」である。

「くしゃみ・鼻汁型」は、鼻に入ってきた花粉が粘膜を刺激することで、肥満細胞からヒスタミンという物質が放出され、これが鼻の知覚神経を刺激し、異物を出そうとくしゃみ、鼻水が出るというもの。一方「鼻閉型」では、花粉により炎症を引き起こす物質がつくられ、鼻の粘膜の毛細血管が膨張し、粘膜全体が水ぶくれのようになり、鼻づまりが起こる。

薬物療法は、花粉症のタイプと、症状の重症度(軽症、中等症、重症、最重症)を考慮して計画する。例えば、チームで仕事をする時、一人で全てをこなせる万能選手は滅多にいない。さまざまな人をうまく組み合わせてこそ成果をあげられるのだが、それは薬でも同じで、万能薬というものはないため、薬それぞれの特性を分かって使用することが重要だ。
 

【手術療法】:レーザーなど
鼻粘膜にレーザーを照射して粘膜の表層部分を変性させ、アレルギー反応を鈍くさせる方法。アレルギー体質を変える治療ではないため、変性した鼻粘膜が再生してくると効果は薄れてくる。この療法は、通年性のアレルギー性鼻炎、対症療法の効果が不十分、副作用のために対症療法が行えない、授乳中や妊娠の希望があるために薬の服用をできるだけ減らしたい、というような場合に適応される。
 

薬の種類 作用副作用
第1世代抗ヒスタミン薬
d‐マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチンなど
ヒスタミンがH1受容体と反応するのを阻害することで、アレルギー反応を抑える。
即効性があり。副作用として、眠気、口の渇き、倦怠感などがあり生活に支障をきたす場合がある。
第2世代抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)
塩酸セチリジン、フマル酸ケトチフェン、塩酸エピナスチンなど
第1世代に比べると効果は弱めだが、副作用が軽いため、
初期治療からシーズン終わりまで通して服用しやすい。
ケミカルメディエーター遊離抑制薬
クロモグリク酸ナトリウム、トラニラストなど
肥満細胞からヒスタミンなどアレルギー物質が遊離するのを抑制する薬である。
抗ヒスタミン剤に比べて、体感的な効果は弱いが、副作用が弱いので、抗ヒスタミン薬が副作用で服用しにくい場合に使う。
効果発現に2~3週間かかるので、「初期治療」に使われる。
抗ロイコトリエン薬
プランルカスト水和物
ロイコトリエンは鼻粘膜の炎症や腫れを引き起こすことによって、鼻づまり(鼻閉)の原因となる。
これを阻害して、鼻閉型の花粉症に効果を発揮する。効果が現れるまでに約2週間かかる。
点鼻噴霧用ステロイド薬
「プロピオン酸フルチカゾン」など
強い鼻づまりを改善するときなどに使用。
内服ステロイド薬に比べて全身への副作用が少ない。
ステロイド薬(経口用)
ベタメタゾン・d‐マレイン酸クロルフェニラミン配合剤
重い症状の場合、1週間以内に限って使用する。
点鼻用血管収縮薬 鼻の粘膜の血管を収縮させて鼻づまりを一時的に改善するが、
連続使用すると効果がなくなり、逆に鼻づまりがひどくなる場合がある。

表の補足
◎抗ヒスタミン剤
ヒスタミンはアレルギーの発症に深く関与する物質のため「悪役」とされ、本来の役割が意外に知られていない。ヒスタミンは、脳内で作用することで集中力、判断力が高まり、無駄な食欲や痙攣を抑制するという機能がある。第一世代抗ヒスタミン剤は、脳にも入ってしまうので、アレルギー反応と一緒に、こうした良い効果も全てブロックされてしまい、眠気、口の渇き、倦怠感などが出現する。脳での副作用をなくすには、薬が、脳血液関門を超えて、脳に行かなければ良い。その発想によって開発されたのが、第二世代の抗ヒスタミン剤である。

第二世代抗ヒスタミン剤が登場してから、「初期治療」が推奨されるようになった。これは、花粉が飛散する1~2週間前から抗ヒスタミン剤を服用することで、アレルギー症状を軽くし、かつ、その症状が強まる時期を遅らせる方法である。患者は花粉に対して極めて過敏(H1受容体の数が多い)ので、極少量の花粉に曝露するだけで、症状が出ない程度の潜在的なアレルギー症状が起きる。この状態を放置せず、早めに抗ヒスタミン剤を服用しておけば、潜在的なアレルギー反応を抑えこむことで、後の本格的な花粉症シーズンでも症状の悪化を防げる。

関東地方についていえば、例年花粉症が本格化するのは2月上旬以降だが、すでに1月下旬からわずかながらも花粉は飛散している。鼻水やくしゃみといった目に見える症状が出ていなくても、この時期に服用を開始することが「初期治療」となる。

◎点鼻用血管収縮剤
鼻の粘膜の奥には海面静脈叢(血管が張り巡らされているスポンジのような部分)があり、この部分の血管が腫れて血液で一杯になると鼻閉が起こる。点鼻用血管収縮剤には交感神経を刺激する作用があるため、血管が収縮する。すると、スポンジを絞って水を出した状態になるので、鼻閉が改善する。鼻噴霧用ステロイド剤や抗ロイコトリエン剤より効果が強いが一時的なので、繰り返し薬を使うことになる。繰り返していると、この海面静脈叢の血管以外の部分が徐々に固く腫れ、効果が薄くなる。この状態を薬剤性鼻炎という。

このような理由から、花粉症の治療ガイドラインでは、点鼻用血管収縮剤(薬)の点鼻薬は、鼻閉が極端にひどい重症の鼻炎の場合に限り、1日1~2回を限度に、1~2週間を目安として使うこと、この間に他の薬剤を併用して鼻炎が軽症化してきたら、ただちに点鼻用血管収縮剤の使用を中止することが推奨されている。

 
注:情報のご利用にあたっては、必ず主治医と相談したうえで、自己責任でお願いいたします。情報利用の結果、問題が発生しても、責任を負えないことをご了承ください。
 

(写真はイメージ)

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