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伊勢志摩サミット・サイドイベントで「クローン文化財」を紹介

伊勢志摩サミットが開かれた26日、サイドイベントとして、「テロと文化財-テロリストによる文化財破壊・不正取引へのカウンターメッセージ」が開催された。「クローン文化財」という、失われたオリジナルの文化財と同素材・同質感で再現された復元作品が、サミットのディナー会場に隣接したスペースに設置され、日本の高度な修復技術をアピールするとともに、文化財をテロリストから守るメッセージを発信した。

サミット会場で展示された作品は、バーミヤン東大仏天井壁画と法隆寺金堂壁画。文部科学省と科学技術振興機構(JST)が実施するセンター・オブ・イノベーション(COI)プログラムで研究開発に取り組む、東京藝術大学の宮廻正明教授らの成果だ。1970年代に京都大学の調査隊が撮影したバーミヤン遺跡の資料と、ドイツの調査団が計測した三次元データを活用して再現したもの。最新のデジタル撮影技術、東京藝術大学が持つ2次元、3次元の印刷技術を融合させて高精度・同質感で再現する特許技術と、同大学が世界に誇る伝統的な技法や感性を融合させて復元した。

この復元技術は、失われたオリジナルと同素材・同質感であるのみならず、技法、素材、文化的背景など、芸術のDNAに至るまで再現し、「クローン文化財」と名付けられている。美術品をそのコンセプトから復元するには、オリジナルの価値と制作技法を深く理解する者の関与が必須であり、デジタル画像による複製品とは明確に異なる。流出または消失した世界中の文化財を「もの」としてだけではなく、精神性や意図までも再現することで、文化財の破壊を無力化し、文化の共有が実現可能となる。

尚、バーミヤン東大仏天井壁画の復元作品は、6月19日まで開催中の「東京藝術大学 アフガニスタン特別企画展」で見学が可能。

バーミヤン東大仏天井壁画「天翔る太陽神図」破壊前復元
バーミヤン東大仏天井壁画「天翔る太陽神図」破壊前復元(2016年)

法隆寺金堂壁画第6号壁 焼損前復元
法隆寺金堂壁画第6号壁 焼損前復元(2014年)

画像提供:サミットフォト、科学技術振興機構(JST)

 
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