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【寄稿コラム】ドイツ―難民支援の現場から(2)-ベルリンでボランティアに参加する(前編)

難民問題について知りたいのなら、現場にいる生身の人間に会わなければならないと思った。難民受け入れをめぐってはドイツでも賛否両論の議論があり、政治的解決に答えを求める人は多い。しかし内戦や紛争、政治的迫害や宗教的迫害が生み出した難民という犠牲者を、だれかがどこかで受け入れてあげなければならないという現実がある。難民支援を積極的に支持するドイツ人の多くは、難民を一人の隣人としてとらえて向き合っているのではないかという印象を持った。
 

ドイツは2015年の1年で、100万人以上の難民を受け入れた。その流れが加速した大きなきっかけは、9月5日にメルケル首相が発した「難民を検問なしに受け入れる」という一声だった。この数日前、1枚の衝撃的な写真が世界中に報道された。それは、トルコの海岸に横たわる3歳のシリア人の男の子の溺死写真だった。この男の子は家族とともに海を渡って欧州を目指す中で、乗っていたボートが転覆し、溺死したのだった。その小さな遺体を、トルコ人の警備員が抱き上げていた。この1枚の写真はドイツ国内でも、それまでほとんど数字でしか語られていなかった難民問題を、生身の人間の命にかかわる問題として認識させた。

「難民問題について取材したかったら、一度宿泊施設でボランティアしてみるといいと思うよ!」
ベルリン自由大学で政治学を専攻しているゾフィーはそう言って、彼女自身がボランティアをしているベルリナー・シュタットミッシオーン(以下BS)を紹介してくれた。指定のメールアドレスにメールを送ると、グーグルドキュメントでボランティアのスケジュール表が送られてきた。空いている時間帯の欄に自分の名前を書き込むと登録が完了する。筆者は12:00~16:00まで4時間の、食堂での食事当番のボランティアに申し込んだ。

場所は、ベルリン中央駅から10分ほど歩いた空き地に設置された難民緊急宿泊施設。行ってみるとそこには、巨大なエアドームがそびえていた。エアドームとは、空気膜構造建築の一種で、内圧を外気圧より高くして風船のようにふくらませた、柱のいらない巨大なテントのようなドームだ。このエアドームはもともと、厳寒時のホームレスの一時宿泊所として活用されていたものだという。

12時少し前に到着してロッカーに荷物を入れ、キッチンに行くと、すでに200人分の食事が出来上がっており、大型食洗器の中から洗い終わった食器を取り出して拭く作業から手伝った。この日の食事当番は筆者を入れて5人。常連ボランティアのウルフとヴァルトラウト、大学で心理学を専攻しているという男子学生のヤーコプ、そして新入りの筆者に対して、常勤スタッフのユーディットが全体を把握しててきぱきと指示を出し、仕事を教えてくれた。

臨時仮設住宅のはずのエアドームの中には、生活に必要なものはほぼ完備されており、キッチンも本格的な業務用キッチンだった。そして筆者の頭の中にあった「炊き出しで配るスープ」よりも、はるかに気の利いた食事がここでは提供されていた。

[冒頭の写真]
ベルリン中央駅近くの空き地に設置されたエアドーム。最多で300人収容可能な緊急宿泊施設だ

ドイツ―難民支援の現場から(2)-ベルリンでボランティアに参加する
エアドーム内観。私物用のロッカーと卓球台が並んでいる

ドイツ―難民支援の現場から(2)-ベルリンでボランティアに参加する
「昼食は1:00~2:00まで」と書かれた食堂の看板。イスラム教徒の難民に配慮して「豚肉は扱っていません」との表示も

ドイツ―難民支援の現場から(2)-ベルリンでボランティアに参加する
ここにも、子どもたちの描いた色とりどりの絵が貼ってあった

 
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