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高校生が描く50年後の地球 温暖化で世界はどう変わる?

27日、気象庁で気候講演会「高校生と考える、地球温暖化とわたしたちの未来」が開かれた。高校生が50年後の地球の姿や、それに伴って社会や科学技術がどう変化するかについて考えてアイデアを発表し、専門家たちとパネルディスカッションした。現代の常識にとらわれない自由な発想のアイデア、自分たちの世代がこれらの課題を解決していくのだという気構えの若者たちに、会場の人々は心からの拍手を送った。

参加したのは、横浜サイエンスフロンティア高校、東京学芸大学附属高校、獨協高校、お茶の水女子大学附属高校の学生19人。パネリストとして国立環境研究所・気候変動リスク評価研究室長の江守正多氏、国連広報センター所長の根本かおる氏、日本経済団体連合会・環境エネルギー本部主幹の谷川喜祥氏、関西テレビ気象キャスターの片平敦氏、NHK気象キャスターの斉田季実治氏、気象庁地球環境・海洋部気候情報課調査官の田中昌太郎氏らが登壇した。

高校生たちは事前に「地球温暖化によって、日々の生活にどんな変化が起きそうか」をテーマに自由にアイデアを書き出し、チームごとに議論。講演会ではその結果を発表した。進行を務めた江守氏は、事前ワークの状況を振り返り「(高校生たちは)大人と同等かそれ以上に温暖化への知識を持っているかもしれない」と評価。また、今回の発表内容を聞き、「現実の課題とすり合わせる議論はいずれ必要となるが、そういった声に邪魔されないで自由な発想を大事にしてほしい」とエールを送った。

 

ユニークなアイデア大切に

温暖化が進んだときに技術・街がどう変化するかについて、横浜サイエンスフロンティア高校の今野さんたちのチームは、「道路の土化」というアイデアを発表。かつては自動車が走りやすいようにアスファルトの道路が作られたが、今はヒートアイランド現象の原因となっている。それならば、土あるいは緑の道にしてはどうか。悪天候時に路面が悪くなるデメリットも考えられるが、屋上や壁面の緑化を拡大して「路面も緑化」してしまおう、というアイデアだ。

これについて、「あまり現実的ではないのでは」という感想も出る中で、お茶の水女子大学附属高校の丹羽さんは「技術改革によって新しい形態の車が生まれれば社会も変わる。将来、宙を浮く車が発明されれば走りやすい路面の確保は不要になり、アスファルトもいらなくなる。すると、路面も緑化してしまおうという流れも生じ得ると考えた」と補足。「3年後は無理かもしれないが50年後、100年後ならできる」と自信を見せた。

また、各チームで共通していたアイデアが「地下空間の利用」。気温上昇によって外気下で生活しにくくなることを想定し、温度が安定している地中に施設や都市などを作り、そこに住むようになるだろうというものだ。健康面でのデメリットや貧富の格差が拡大するかもしれないという課題も挙げつつ、室外活動時間の減少については各チームで共通した指摘だった。

専門家からはSF小説のディストピアのようだという反応や、宇宙開発ではなくあえて地下なのか、など戸惑いや寂しさの漂う反応もみられる中、東京学芸大学附属高校の高木さんは「自分も初めて地下鉄に乗ったときは地震があったら大丈夫だろうかと怖かった。しかし今は地下鉄で通学しているし、みんなも当たり前のように利用している。すでに地下利用が現実的になっている。宇宙開発より現実的だと思う」と補足。決して非現実的な話ではないことを強調した。

 

未来は明るいか?

途中、江守氏が会場の高校生たちに挙手のアンケートをとった。

「未来は明るいか、暗いか」。これに対し、ほとんどが「暗い」に挙手。一方、「前の世代の人々が残したのは正の遺産(良い面が多い)か、負の遺産(悪い面が多い)か」という問いに対して、4分の3が「正の遺産」、4分の1が「負の遺産」と答えた。

「未来は明るい」と答えた東京学芸大学附属高校の山口さんは、「私たちは地球温暖化に対して(技術の発展で)適応する能力を持っている。頭ごなしに『未来は暗い』と考えると、発展する力が押さえつけられてしまう。『まだ未来はわからないから、これから希望をもって発明していくんだ』という強い意志を持って生活してくのが重要なのではないか」と述べた。前向きな姿勢に、会場からは自然と拍手が沸き上がった。

江守氏は「現実的な議論は、今後それぞれが学んで深めていってもらえたらいい。しかし決してそれによって発想の邪魔をされないでほしい。それはあなたたちの発想によって乗り越えるべきチャレンジであって、現実的な問題があるからそのアイデアはだめだということではない」と述べ、「勇気と希望を受け取った」と締めくくった。

パネルディスカッションの序盤にあったのは「子ども」を見守る大人たちの温かい視線だったが、終盤には彼らを「大人」として尊重し、未来に期待する雰囲気に変わっていった。

高校生が描く50年後の地球 温暖化で世界はどう変わる?