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イヌも人に共感する!? ヒトとイヌの情動変化の関連を明らかに

イヌも人に共感する!? ヒトとイヌの情動変化の関連を明らかに

麻布大学の菊水健史教授らの研究チームは、飼い主とイヌの心拍数を計測することで、それぞれの情動が同調して変化することを初めて明らかにした。しかも、飼育期間が長くなることで、この同調率が上昇し、またメスの方がオスよりも同調しやすかった。これらの結果は、情動の伝染の進化要因として、遺伝的なものよりも生活空間の共有が重要であるという理論に一致している。この成果は19日にスイスの学術誌「フロンティアズ・イン・サイコロジー」に掲載された。

 

親和的な個体間では互いの情動が同調しあう

イヌはヒトと共生を始めた最も古い家畜だ。この共生の過程で、イヌはヒトの出すシグナル、例えば指差しや視線などに対して高い反応を示し、さらにヒトの情動の変化も認知できるようになった。こうした高い社会認知能力を獲得したことで、イヌはヒトと視線を介してお互いが絆形成や信頼に関わるホルモン「オキシトシン」を分泌し、絆を形成できる特別な関係となった。

一般に、親和的な関係にある個体間では、互いの情動が同調しあう「情動伝染」が認められる。子供が悲しい思いをすると親も辛くなる、チームメイトが活躍し嬉しいと自分も嬉しくなる、などがその例だ。この情動伝染は共感の起源的な機能と言われ、また他者視点などの高い認知能力を必要としないことから、サルやマウスでも観察されてきた。これまでヒトとイヌの間における情動伝染の研究では、ヒトが悲しそうな顔をしたときのイヌの行動変化などが調べられてきたが、秒単位で変化する情動を正確に評価することができなかった。そのため、ヒトとイヌのような異種間での情動伝染の存在を確実に証明した研究はなかった。

 

飼育期間が長いと、イヌと飼い主は同調しやすい

今回研究チームは、ヒトとイヌ、それぞれの心拍数を10秒間隔で解析することで、ヒトとイヌの情動変化が同調していることを明らかにした。実験では13組の飼い主とイヌのペアを解析。飼い主はイヌから見える位置に座ってもらい、見学者の前で安静にする、あるいは暗算や文章の説明といった心的なストレスを経験してもらった。この間、イヌは飼い主のみ見ることができ、見学者とは交流できないようにした。飼い主とイヌには心拍計を装着し、イヌと飼い主の心拍をモニタし、その行動をビデオで解析して、実験後に心拍数の変動を解析した。その結果、いくつかの飼い主とイヌのペアでは心拍変動が同調していた。しかし、すべてのペアで同調したわけではなかった。その違いを調べると、飼育期間が長いと同調しやすいことがわかった。

今回の研究で、ヒトの情動変化がイヌの情動変化へと伝染することが確認された。その伝染は秒単位での変化として検出された。また、飼い主との生活が長くなることで、伝染しやすくなることも示された。これまで、この「情動伝染」の進化理論として、遺伝的関係性よりも生活環境の共有がその進化要因であると示されていた。今回、ヒトとイヌという異種間(遺伝的には関係のない個体間)において、飼育期間が長いこと、つまり生活環境の共有が長いことによって情動伝染が起こりやすいことが示され、進化理論と合致した結果となった。

ヒトとイヌの共生の歴史で、情動伝染の存在は、相互理解や協力関係の構築において重要であったと思われる。今回の結果から、ヒトとイヌの長くて深い関係性の一端が明らかになった。

(写真はイメージ)