シャーペンの芯が未来の電子ビームに!? 筑波大が身近な素材で最先端技術を実現

筑波大学の研究チームは7月30日、シャープペンシルの芯を高品質な電子ビームの発生源として利用できることを見出した。芯の先端を処理することで「グラフェン」と呼ばれる炭素の板の端を整えることができ、強い電圧をかけずとも安定して電子を放出することができた。

グラフェンやカーボンナノチューブのようなナノ炭素材料は、電子顕微鏡などに使う高性能な電子ビームの発生源としての応用が期待されている。しかし、電子を放出しやすいようにナノ炭素材料を並べたり向きを揃えるのは難しく、実用化には至っていなかった。

研究チームは、シャープペンシルの芯という身近な材料が、適度に粉末状のグラファイトを含有しており、それらの向きが揃っている点に着⽬した。芯を割った断面を超⾼真空中で加熱処理し、そこからの電子の放出を調べたところ、「ドラゴンフライパターン」と呼ばれるグラフェンの端からの電子の放出に特徴的な形を確認できた。さらに、グラフェンの形状や化学的安定性を反映して、低電圧、軽い真空環境でも安定して電子が放出されることが分かった。

この方法は特別な材料や設備に頼らず、誰でも手に入る素材を使って高性能な電子ビーム源を作ることができる。将来的には、次世代の電子顕微鏡やディスプレイなどのさまざまな科学装置での利用が期待される。今後、より長期間使用でき、さらに効率のよい電子の放出を実現する改良を進めるとしている。論文は7月28日付けで「Scientific Reports」に掲載された。

(写真はイメージ)