細菌を「だまして」汚染物質を分解 遺伝子操作なしの環境浄化技術を開発 名大 

名古屋大学は11日、土の中にいる普通の細菌を“だまして”有害物質を分解させる新しい環境浄化の技術を開発したと発表した。ダイオキシンなど分解されにくい汚染物質の処理に役立つ可能性がある。この研究成果は英国王立化学会の学術誌に掲載された。

ベンゼンやダイオキシン類などの化学物質は、環境中で長く残る汚染物質として知られる。これらを除去する方法として、微生物の働きを利用して汚染物質を浄化する「バイオレメディエーション」という手法が注目されている。しかし、分解能力を高めるために遺伝子操作した細菌を環境中で使う場合、生物多様性への影響などを防ぐため厳しい規制がある。

名大の研究チームは、細菌の遺伝子を変えるのではなく、外から与える小さな分子で細菌の酵素の働きを変える方法を考えた。脂肪酸に似た「デコイ分子」と呼ばれる物質を加えると、細菌の酵素が本来とは違う物質を分解するよう誘導できる。

実験では、土壌に広く存在する細菌にデコイ分子を加えることで、ベンゼンやトルエンなどの汚染物質を分解する反応が起きることを確認した。さらに、ダイオキシン類のモデル化合物でも分解が進むことが分かった。

この反応では、細菌が持つ酵素が汚染物質に酸素を付ける「水酸化」と呼ばれる化学反応を起こす。水酸化によって物質は水に溶けやすくなり、ほかの微生物による分解も進みやすくなるという。

この土壌に存在する細菌を“だまして”有害物質を分解させる方法は遺伝子操作を行わないため、遺伝子組み換え生物に適用される厳しい規制を受けにくい利点がある。同チームは「自然界に豊富に存在する微生物をそのまま活用できる新しい環境浄化技術につながる可能性がある」としている。

画像提供:名古屋大学