
ASEAN外交が映すアジア太平洋の現在地
アジア太平洋外交が、この7月後半に大きな節目を迎える。7月21日に開幕した、フィリピン・マニラでの東南アジア諸国連合(ASEAN)の第59回外相会議(AMM)と関連会議は、24日までの日程で開催されている。期間中にはASEANプラス3(日中韓)、東アジアサミット(EAS)外相会議、ASEAN地域フォーラム(ARF)などが予定され、日本、米国、中国、韓国、オーストラリアなど域内外の主要国が一堂に会する。今年最大級のアジア外交イベントであり、ミャンマー情勢や南シナ海問題、経済安全保障などが主要議題となる見通しだ。
今回の会議を前に注目されたのが、7月12日にタイ・バンコクで開かれたASEANとミャンマー軍政側との非公式会合である。今回の対面協議は、2021年のクーデター以降では異例の動きとして注目された。また、ASEAN特使は軍側関係者だけでなく、一部の少数民族武装勢力とも意見交換を進め、「対話の窓口を広げる」姿勢を示している。一方で、民主派勢力の国民統一政府(NUG)は協議の枠組みに参加しておらず、ASEANの対応に批判的な立場を示している。地域の安定に向けた外交努力は続くものの、包摂的な対話の実現にはなお課題が残る。
南シナ海行動規範の行方と米中対立の構図
もう一つの焦点は南シナ海問題だ。フィリピンをはじめとする沿岸国は、中国と進める「南シナ海行動規範(COC)」交渉の前進を期待する一方、中国との経済関係を重視する加盟国も少なくない。安全保障と経済をどう両立させるかは、ASEANが長年培ってきた合意形成能力の真価が問われるテーマといえる。
会議期間中には、米国務長官、中国外相、日本外相らによる二国間会談も予定されており、米中関係や地域の経済安全保障を巡る意見交換が行われる見込みだ。ASEANは、インドネシアやベトナム、フィリピン、シンガポールなど東南アジア10か国で構成され、人口約7億人、域内総生産(GDP)約4兆ドルを擁する世界有数の地域協力機構である。ASEAN関連会議は、域内協力だけでなく、米中をはじめとする大国間外交の重要な接点となっている。
7月後半の一連の会議でどのような合意や共同声明が打ち出されるのか。その成果は、東南アジアだけでなく、アジア太平洋全体の安定と協力の方向性を占う重要な試金石となるだろう。
画像提供:ASEAN2026(フィリピン・マニラで開催されたASEANハイレベルフォーラム。ASEANでは外交だけでなく、経済や社会課題など幅広いテーマを巡る会議が開催されている)

