
「飲まない」をあえて選ぶ「ソバーキュリアス」 【ニュースのコトバ解説】
「今日はお酒を飲まない」。そんな選択が、少しずつ身近なものになっている。
近年、「ソバーキュリアス(Sober Curious)」という言葉が注目されている。これは、お酒を飲める人も含め、あえて「飲まない」選択をする価値観やライフスタイルのことだ。 完全に禁酒するのではなく、飲酒量を減らしたり、特定の日は飲まなかったりすることで、自分とアルコールとの関係を見直していく。日本でもノンアルコール飲料の市場が拡大し、飲料メーカー各社が新商品を相次いで投入。ノンアルコールカクテル専門バーも登場した。
「Sober」と「Curious」から生まれた言葉
ソバーキュリアスは、「ソバー(しらふ、酔っていない)」と「キュリアス(好奇心のある)」を組み合わせた造語だ。イギリスのジャーナリストであるルビー・ウォリントンが、2018年に著書でこの考え方を提唱した。「なぜお酒を飲むのか」「飲まないと生活や気分はどう変わるのか」という問いをきっかけに、お酒を飲むかどうかを自分の意思で選択する。禁酒主義とは異なり、飲むことも飲まないことも選択肢として捉える点に特徴がある。
ノンアル市場は10年前の約1.6倍に
こうした価値観の変化を数字が示している。サントリー(東京都港区)の調査によると、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4584万ケースで、前年比111%となった。10年前と比べて約1.6倍の規模だ。2025年は約4730万ケース、前年比103%となり、過去最大規模を更新したと推計される。 飲む理由にも変化がある。健康への配慮に加え、「おいしくなったから」という味への評価が選択理由になっている。月1回以上ノンアルコール飲料を飲む人の7割以上が、飲食店でノンアルコール飲料を楽しめる機会が増えることを希望しているという。
2026年、メーカー各社が商品開発を加速
市場の拡大を受け、2026年も各社から新商品が登場している。キリンビール(東京都中野区)は4月、ビールを造った後にアルコールを取り除く製法で、味わいを追求した新商品を発売。サントリーも4月、新商品を発売し、選択肢を広げている。ノンアルコール市場の拡大はビールにとどまらず、チューハイテイスト飲料や、ワインなどへ広がっている。
ノンアル専門バーも登場
商品だけでなく、飲食店にも変化がある。東京では、ノンアルコールカクテル専門店も登場した。2026年5月には、世界的なお酒のイベントにも出展し、アルコールを使うカクテルをモチーフにしたアルコール分0.00%の飲み物を提供した。バーという従来アルコールが中心だった場所でも、ノンアルコールを選択して楽しめる環境が生まれている。
「飲まない」も選択肢の一つに
ソバーキュリアスが示しているのは、単純な「アルコール離れ」ではない。健康や翌日の予定、気分に合わせて飲むか飲まないかを選択する。そのため、ソバーキュリアスの人が一切お酒を飲まないとは限らない。「今日は飲む」「今日は飲まない」と柔軟に選べる環境が整ったことで、お酒を中心に組み立てられてきた食事や夜の過ごし方に変化が生まれている。ノンアルコール飲料の市場拡大や商品開発、専門バーの登場は、こうした新しい飲み方が広がっていることを示している。お酒を飲むか、飲まないか。その選択を自分で決めることが、これからの飲酒文化の一つになっていきそうだ。
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