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「始める力、進める力」青春基地 石黒和己さん

「始める力、進める力」青春基地 石黒和己さん(2)教育の実践の中で自らも成長

特別インタビュー/NPO法人「青春基地」代表理事 石黒和己さん(2)

NPO法人青春基地の代表理事として活動する石黒和己さん。前回は中高生向けの教育プログラムに取り組む様子をお話いただいた。自らも東京大学大学院の学生として学びながら、10代への教育を実践しており、その中で見えてきた教育現場の課題や今後のビジョンなどについて伺った。
 

自身も学生 研究と事業で視野広げる

――今は大学院に在籍中とのことですが、勉強との両立はどうですか?

現在は東京大学の教育研究科で教育哲学を学んでいます。学部は慶應義塾大学SFCの総合政策学部だったため教育を専門的に学ぶ機会が少なく、広い視野の中で実践をしたいと思い、大学院進学を決めました。現場でなんとなく感じた違和感の数々が、先輩たちの研究や輪読を通じて言語化されて、発展して思考していけるのはとても面白いです。小さな違和感から、先人たちの理論や論争を辿ることは時にゾクゾクするし、ヒントばかりです。何より教育は教育者の原体験に左右されやすい危うさがある分野なので、理論によって、普遍的によいと言われていることを問い直しながら現場を作っていくことが必要なんじゃないかなと思ってます。
ただ自分の性格もあるのですが、仕事との両立はなかなか難しく、日々葛藤しています。
 

――大学院の卒業後の進路は?

青春基地に専念する予定です。これからどんどん面白くなっていくので! NPOという場での仕事は事業収益を上げることよりも、社会課題の解決に向けてまず課題を定義していくことが使命だと思っています。その意味で事業には何より探究心が大切で、そうやって見えなかった世界がだんだんと見えるようになってくることが面白いです。たとえば、去年は山梨や福島で取り組んできた「プロジェクト型学習」という一つのコンテンツを提供するという視点しかなかったのですが、半年間を通じて町の人たちと出会うことで、地域というものの大きな営みが見えてきました。今は、学校単体、授業単体ではなく広い視野で考えています。そして私たちのような外部の者から提供された一つの授業だけで良くなるのではなくて、生徒、保護者、地域、周囲の人たち、当事者みんなが変わっていかないと学校が変わることは難しいのではないかと気付いたことも大きな発見でした。これからもっと学校や地域と付き合っていくと、自分の見る解像度が上がって、また違うものが見えてくるんじゃないかなと思っています。
 

「動きながら学ぶ」当たり前に

私たちは、“動きながら学ぶ”という「プロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)」が高校教育にとって当たり前になる社会を実現したいと考えているので、その阻害要因が何かを見抜いていきたいです。今、一つ見えていることは、学校の先生たちがすごく忙しいということ。他にも、外部から人材を連れてくるためのスキームがないとか、予算がないとか、細かな課題も見えてきました。学校ごとに独自の文化や習慣があるので、どうしたら外部として学校教育に携わっていけるかを一つ一つ探っていきたいと思っています。
そしてそれらの課題については、他の地域のコーディネーターの皆さんとも悩みを共有し、団体を超えて、アイデアを持ち寄って議論を進めていきたいです。一人で、一組織で変えていくのではなく、みんなでやっていきたいなあと思っています。今、取り組んでいるどちらの高校も他のNPOとも協働をしているのですが、自分たちでは全く考えないような視点を得られる時があり、幅が広がるし、楽しく仕事をさせてもらっています。
 

――将来の目標、10年後にはこういうことやっていたいというものはありますか?

公設民営の高校をつくりたいですね。既存校でも新設でもどちらでもいいですが、地域に根差しながら学校をつくりたいです。開かれた学びの場の困難や葛藤に挑戦してみたいです。そして、いろんな人たちを学校に巻き込んでいきたいですね。

「とりあえずやってみよう」「のびのび直観信じる」大切に

――育てたい人物像は?

みんな、自分らしく、楽しく幸せに育ったらいいなと思います。リーダーを育てるというより、一人一人が自分のサイズ感でいいので挑戦できる社会がいいなと思います。全員が手を挙げるとか、バリバリ行動するとかではなく、たとえば80歳のおばあさんになった時、自分の友人が困っていたら「自分にはどうにも、しようがない」ではなくて、何かしら手足を動かして力になろうとするというような、他者へのやさしさを持てるような人を育てられたら嬉しいです。「こうしなきゃいけない」とか「失敗しそうで怖い」とかは、紐解けば、大抵空虚な不安や固定概念なのですが、それに縛られて動けないのではなくて、のびのびと直感を信じられる人を育てられるようになれたらいいなと思います。
 

――最後に、今の学生、10代、20代など、若い人たちに伝えたいことをお願いします。

青春基地のコンセプトは「想定外の未来をつくる」です。この「未来」の定義は、時代の変化の意味も含んでいますが、何より一人一人の自分自身の未来なんです。「どうせ無理」ではなく「とりあえずやってみよう」と思うことで、自分が想像できないチャンスが訪れることを信じてほしいです。
実際に、高校生たちと多くの人たちを取材してきて気づいたことは、高校生や大学生という若い世代が本気で思いを伝えると、取材を受けてくださった方々は大抵嬉しいと感じてくださるということです。さすがに厳しいと思ってた相手から快諾されたときの喜びは大きいです。手が届かないと思わず、会いたい人にはちゃんとアポを取ることを抜かりなくやることが大切だと思います。
そして会って話せると、自分の世界がグンっと一気に広がると思います。17才、18才、とにかく10代は無敵です。自分もあとちょっと恩恵を受けたいですね(笑)
そして、何か進めようとして不安になったら、まず周りの友人や親しい大人に相談してみてください。不安って、具体的に障壁があるというよりは、「なんとなく不安」というドキドキしている気持ちだと思うので、誰かにぶつけてみたらいいと思います(笑)。

(おわり)

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