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タレントの飲酒事件からアルコール依存症を解説!(1)

タレントの飲酒事件からアルコール依存症を解説!(1)

タレントの山口達也さんが、強制わいせつ容疑で書類送検された件が話題になっています。相手が未成年の女子高生だったこと、彼女に飲酒を強要したこと、そして本人がアルコール依存症だったのではないかという点が注目を集めています。この事件を、依存症専門医の立場から解説していただきます。

解説:垣渕洋一
成増厚生病院・東京アルコール医療総合センター長
専門:臨床精神医学(特に依存症、気分障害)、産業精神保健
資格:医学博士 日本精神神経学会認定専門医
事件を構成している3つの問題

今回の件には、(1)リスク・マネジメント、(2)依存症、(3)性犯罪という3つの問題があります。その3つをいったん分けて見て、その上で繋がりを考えることで本質に迫ることができると考えます。まず、1番目のリスク・マネジメントについて解説したいと思います。

リスク・マネジメントは、事件・事故の予防と、起きた時に損害を最小限にとどめる事後対応の両方を指します。ちなみに後者を、専門用語でダメージ・コントロールといいます。

今回の事件では、被害者と保護者、山口さん、ジャニーズ事務所、NHKといった、事件に関わる個人と組織がリスク・マネジメント、特にダメージ・コントロールを懸命に行なった過程が露呈してしまい、メディアを賑わせるようになりました。こういった事件を予防する策が成されていたのでしょうか?

報道によれば、「山口さんが酩酊すると、セクハラ行為がある」ということは、関係者の間で広く知られていたようです。なので組織としては、「酩酊している時には、女性を遠ざける」、「業務として参加する宴席では飲酒させない」といった予防策を取ることが考えられます。ただ、大人の集まる会合でアルコールが欠かせない日本の習慣では難しく、まして、大スター相手となるともっと困難です。しかし、以前なら「酒の席のことだから」と許容されていたことが、昨今ではそうでは済まなくなってきている現状を認識し、組織としても前述したような予防策を講じる必要性は高まっていると言えます。

「知っている」ことで回避できるリスク

被害者およびその保護者としては、そういう人が参加する酒席には未成年者は参加させない、どうしても参加するなら親同伴というのが予防策になります。「シラフでは下心があっても我慢している人が、アルコールという薬が入ると脳の前頭葉の働きが低下して、脱抑制となり行動してしまう」ということが、どれほど未成年者に対する教育として浸透しているのかが気になります。山口さんの大ファンで会いに行けるとしても、犯罪に遭う可能性が高いと知っていたら行かないでしょう。リスク・マネジメントにおいてはまさに、「知っている」か「知っていないか」で天国か地獄かに別れます。

ダメージ・コントロールにおいては、NHKは今までのところ成功していると思います。それは、被害者が出演し、山口さんが司会をつとめる番組(Eテレ)を制作していたにも関わらず、この事件を最初に報道した点においてです。

印象的だったNHKと芸能事務所の対応の違い

Eテレという教育番組の出演者が起こした事件だけに、他のメディアにスクープされると、「組織ぐるみで隠していたのではないか?」「ジャニーズ事務所だから握りつぶしたのか?」といった批判が巻き起こり、大きなダメージにつながります。ですので、被害者との示談が成立し、書類送検という司法の対処も決まり、報道に対する世論の反応が予測できるようになったタイミングで報道したのではないかと考えられます。

一方、ジャニーズ事務所はどうでしょうか? NHKに報道しないように交渉する中で決裂して報道されてしまったのか、報道内容や日時を打ち合わせた上で十分準備をしてから会見を行なったのか、または報道がなくても会見する予定だったのかはわからないので、会見の準備が成功だったのか失敗だったのかは不明です。一方、会見に同事務所の社長が同席しなかったこと、山口さんが自分の希望を話してしまった(「甘い考えかもしれませんが怒ってくれるのも、もう彼らぐらいしかいない年にもなったので、彼らを信じて、もし、待ってくれている場所が、私の席がそこにあるのであれば、またTOKIOとしてやっていけたらなあ」という言葉)ことからは、「謝罪とは、このようにするべきだろう」と多くの人が考えるものではありませんでした。だから、「おごっている」という批判が殺到したわけで、これが弱小の芸能事務所だったならば倒産していたかもしれません。

一昔前なら関係者のみが知るだけで、「こういうことは、芸能界では常識だ」ということで、メディアで報道されなかった可能性が高いと思われます。時代が進化して規範の次元が上がった分、それに合わせたリスク・マネジメントが求められていることがわかる、報道と会見だったのではないでしょうか。

(写真はイメージ)

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