バイオマス資源や二酸化炭素からアルコールに

天然に豊富にあるカルボン酸を、効率よくアルコールに変換する触媒が開発された。科学技術振興機構(JST)先導的物質変換領域(ACT-C)の研究で、名古屋大学の斎藤進教授らの成果。8月28日に科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』のオンライン版で公開された。

ステアリン酸やラウリン酸、オレイン酸やリノール酸などの脂肪酸や、ブドウに含まれる酒石酸や柑橘類に含まれるクエン酸などもカルボン酸である。このようにカルボン酸は身近な存在だが、非常に安定した構造であるため、アルコールに変換するには高温・高圧という大きなエネルギーが必要だった。しかも変換できるカルボン酸の種類が限られ、望ましくない反応が同時に起こってアルコール以外もできてしまう問題があった。

斎藤教授らは、安定な水素分子とカルボン酸の両方を反応しやすい状態にする触媒構造の原型を発見。新しい触媒は温和な条件で反応が進み、変換できるカルボン酸の種類が大幅に増え、望ましくない反応も起こりにくい。さらに、カルボン酸と類似した構造を持つエステルやアミドが一緒に含まれていても、カルボン酸だけを変換することもわかった。

食品廃棄物や稲わらなど、生物由来のバイオマス資源に含まれるカルボン酸からアルコールを作れば、炭素循環社会に寄与できる。二酸化炭素からカルボン酸を合成してアルコールを作れば、二酸化炭素の資源化にも貢献できると期待される。

画像提供:科学技術振興機構(JST)