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伝統文化を継承するということ――加賀友禅ブランド化の試み 前編

伝統文化を継承するということ(1)―加賀友禅ブランド化の試み 後編

前回は、加賀友禅の「工房久恒」を訪れ、加賀友禅の成り立ちや特徴について伺いました。後編では、ブランド化など新しい試みにいついて紹介します。

(記者)加賀友禅は着物以外にも、嫁入り道具として持参する「花のれん」も有名ですね。このような伝統的な加賀友禅だけではなく、新しい試みをされていると伺いましたが。

伝統文化を継承するということ――加賀友禅ブランド化の試み 後編
嫁入り先の家に入るときに最初にくぐる「花のれん」。送り出す親が娘に託す愛情がこもっている(工房HPより)

(久恒さん)能登の天池合繊株式会社の方が、カネボウが挑戦してできなかった、シルクより細いポリエステルの糸を開発しました。私はその糸で織ったスカーフの上に加賀友禅の図柄を描いています。シルクよりも価値が高く、海外のファッションショーでも使用されています。

伝統文化を継承するということ――加賀友禅ブランド化の試み 後編
天女の羽衣といわれるスカーフ

(記者)このスカーフは本当に天女の羽衣のように軽いですね。
(久恒さん)その他にも、木や金箔の上に描く技法を生み出し、特許も取得しました。またホテルや、コーヒーチェーンのスターバックス等からもお声をかけていただき、インテリア等、一緒に新しい作品を生み出していっています。

伝統文化を継承するということ――加賀友禅ブランド化の試み 後編
友禅柄を彩色した木の器

伝統文化を継承するということ――加賀友禅ブランド化の試み 後編
金沢市街のスターバックスに飾られている加賀友禅のパネル(工房HPより)

(記者)色々な新しい試みをされていますが、伝統を受け継ぐ苦労や意義をどのように感じていらっしゃいますか。
(久恒さん)この地域には加賀友禅の小さな工房がいくつかありますが、着物を着る人が減る中で生活が厳しくなり、職人の高齢化もあって、工房を閉じたり、縮小することを余儀なくされるケースが増えています。昔ながらの体制は問屋を経由しての分業体制となっており、職人の生活は厳しいです。新しい試みには厳しい目もあり、通常の受注が減ることもあります。その中でも、応援してくださる方が多くて力になっています。「伝統文化を受け継ぐ」意義とよく言いますが、「職人たちの生活がまさに文化」だと思っています。国が伝統文化を守り、うまくブランド化するような仕組みも必要だと思います。
 

久恒さんは、私たちの「生活が文化」だとおっしゃいました。文化とは、作る側の生活、使う側の生活が一つとなって育まれていくものなのだと。時代によって文化の様相は変わっていきますが、長く育まれてきたものは私たちのアイデンティティの根幹と無縁ではありません。

新たな試みに挑戦しながら伝統文化を守り続ける久恒さんの姿から、私たちは伝統文化について改めて考える貴重な機会を得ることができるのではないでしょうか。
 

関連サイト
友禅空間工房久恒
天池合繊株式会社