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花が閉じる速度が花粉によって変化 カンサイタンポポの実験で明らかに

花が閉じる速度が花粉によって変化 カンサイタンポポの実験で明らかに

カンサイタンポポの花が受粉によって早く閉じること、そして花粉の影響を受けて花の開閉速度が変わることが、龍谷大学と東北大学の共同研究により世界で初めて明らかになった。この結果は、植物の繁殖にかかわる性質の進化を理解することにつながると期待される。研究成果は6日、国際専門誌『Evolutionary Ecology』誌で公開された。

通常、「タンポポの花(花序)」として認識されているものは実際には小花の集合体で、小花にはめしべが1つあり、めしべを取り囲むように筒状の雄しべ、その外側に1枚の花弁があるという構造になっている。花序は夜は閉じていて、朝日を浴びると開き、夕方頃にまた閉じる。これを2~3日繰り返して、開いているときに受粉が行われるが、カンサイタンポポは自身の花粉では受粉できないので、他の個体の花粉が必要となる。この場合、受粉が成功するかどうかは花序の開閉速度に左右される。受粉したときに花序を閉じることでライバルの花粉を排除することができ、一方で、早く閉じすぎると受粉のタイミングを逃し、種子生産ができず繁殖の機会を逃すことになる。

タンポポの花序と小花の模式図。小花が集合して花序を形成する。タンポポの花序と小花の模式図。小花が集合して花序を形成する。

今回の実験では、網掛けをして昆虫による受粉を防いだタンポポに、他の個体の花粉を受粉したところ、受粉したタンポポは受粉しなかったタンポポより早く花序が閉じることが分かった。これは小花の一部だけが受粉したときも同様で、早く閉じることが確認された。

さらに、めしべと花粉のどちらが花序の閉じるタイミングを決めているのかを調べるために、大阪府、岡山県の3地点から採取したタンポポを用いて、産地間での受粉実験を行ったところ、同種のタンポポであっても、地域ごとに花粉やめしべの性質は異なる方向に進化しており、大阪産のタンポポが生産する花粉は、受け手の花序を早く閉じさせる傾向が見られた。このほかにも花序が閉じるタイミングには花粉の受け手、および出し手と受け手の組み合わせが影響していることが明らかになった。今回の結果により、受け取る花粉の由来によってメス親が花粉を受け入れられなくなるまでの時間が変化することが、世界で初めて証明されたことになる。

花粉と花序の開閉行動は、メス親の行動を操作する性質をもった花粉が進化する可能性を示唆している。今後は、花序を閉じるという行動が種子生産にどのような影響を与えるかについての解明が期待されている。

画像提供:龍谷大学(冒頭の写真はイメージ)