• Talent
  • 一人ひとりの多様な個性・才能が生かされる社会に
  • HOME
  • Talent
  • コロナウイルス感染疑い、「同居家族」になって【後編】
コロナウイルス感染疑い、「同居家族」になって【前編】

コロナウイルス感染疑い、「同居家族」になって【後編】

ようやく病院でPCR検査を受けることができるようになった。が、ここから、また思いもよらない新たな問題に直面することになった。
 

受診や検査で発生する経済的負担

5月14日の検査当日、市内のC病院を指定されてそこへ向かった。検査当日は、基本的に「自家用車を本人が運転してくるように」という指示があったが、車を持っていないため、まずはレンタカーの可能性を考えたが、結局タクシーを使うことになった。公共交通機関を使ってはいけないが、タクシーは使ってよいとのことだった。しかし万が一の感染の危険を考えると、タクシーならよいという理由が謎だった。

タクシーで自宅からおよそ4kmのC病院まで、往復で3500円ほどかかった。タクシー料金は自己負担だった。PCR検査の費用は市が負担してくれたため無料だったが、医療機関を何度も受診した受診料や交通費はすべて自己負担となる。検査を受けた病院は普段利用していない病院だったため、検査費用とは別に初診料がかかった。我が家が10万円の給付金を受け取ることができたのは6月下旬だったため、一時的にイレギュラーな出費が増えることになった。私たちは共働きで収入も減らなかったため、これらの費用を問題なく負担することができたが、コロナの期間に収入が減ったり、仕事がなくなってしまったりした場合などは、検査を受けることすらままならないのではないかと心配になった。
 

結果は陰性、それでも自宅待機を推奨

5月15日の夕方、検査結果が「陰性」だったとの連絡をもらった。検査を受けてから結果が出るまでは1日しかかからなかったが、この間は不安だった。市の医師会から受けとったPCR検査の説明の用紙には、「陽性の場合はすぐに入院、陰性でも2週間くらいは自宅待機を推奨する」と書かれていた。このような状況で自宅待機になっても有給休暇が消費されていくだけで、現実的にはそんなに休むことはできないと思った。夫本人は陰性後も微熱があったものの、検査結果が出たあとは勤務先と相談しながら、よほど体調の悪い日以外は出勤した。その後、夫の体調は少しずつ回復し、6月に入ってからはほぼ健康と言える状態にまで回復できた。今思えば、これまでの仕事の疲れが溜まっていたのかもしれない。
 

うれしかった家族の反応

夫の熱が続いていることや、PCR検査を受けることについては、勤務先に報告する以外ではなかなか人に話すことができなかった。夫も筆者も両親には言わなければと思いながらも、最初の発熱から時間が経つにつれて「心配させてはいけない」という気持ちからも逆に伝えにくくなった。夫の両親からは熱を出す前から再三、「有給が使えるならできるだけ休んだら?」「コロナ、本当に危ないと思うよ」と言われていた。

結局PCR検査の後に夫の母親から「最近元気?」というLINEが来たことで、「実は少し熱を出してPCR検査を受けた」と伝えることになったが、すぐに電話がかかってきて「熱は?」「会社は行っているの?」「また状況が何か変わったらすぐに病院へ行きなさいね」と言われ、心から心配してくれているのを感じて励まされた。このコロナの期間の中で、なかなか会うことのできない家族との関係性はより深まったと感じた。

そして後になって考えてみると、自分の体、健康、命より、目の前の仕事や生活を優先せざるを得ない状況にあったことを少し後悔した。
 

コロナで感じた「病気になること」以外の不安

今回、幸いにも夫は陰性で、熱も高熱にはならず、病院を自分で調べて歩いて行くことができたし、妻である筆者が同居家族として支えられたことも大きかったと思う。もしもっと症状が重く一人暮らしだったら、どうやって対応できただろうかと心配になった。

東京都の緊急事態宣言は解除されたが、感染者は日々新たに報告され、亡くなっている人たちもいる。さらに、それぞれの感染者に関わる医療関係者、家族がいて、彼らもまたコロナ禍の最前線にいる当事者だ。

今回、身近な人がコロナ感染の疑いがある状態になったとき、自らが感染して苦しむことに対する病気そのものへの不安だけでなく、感染者になった場合に周囲に与える影響、そして周囲から受けるかもしれない差別や非難に対する不安がとても大きかった。

実際に最近、筆者の勤務先で、発熱してPCR検査の結果待ちの人に対して、「本人の自己管理能力がないのでは……」という同僚の話し声が聞こえて、暗い気持ちになった。同時に、「確かにそういう面もあるかもしれない」と、一連の経験をしたにも関わらず感じた自分を、情けなくも思った。

感染者、濃厚接触者、さらに彼らに関わる人たちは、まだ治療薬の見つかっていないコロナウイルスに苦しめられ、肉体的にも精神的にも大きな困難の中にいる。私たちも明日、彼らのひとりになるかもしれない。そんな思いで、もっと心から互いに支え合い、いたわり合える社会を作っていきたいと思った。

(写真はイメージ)
 

コロナウイルス感染疑い、「同居家族」になって【前編】

コロナウイルス感染疑い、「同居家族」になって【中編】

関連記事一覧