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沖縄慰霊の日「6月23日」 平和を考える機会に

The HOPE of HENOKO 辺野古・美ら海からのメッセージ

豊かな自然と美しい海、伝統工芸品や郷土料理など、観光地として人気の高い沖縄。その中でも辺野古・大浦湾一帯にはサンゴ礁が広がり、262種の絶滅危惧種を含む5800種以上の生き物たちが住んでいる。日本国内では唯一沖縄にだけ生息している、絶滅危惧種のジュゴンの鳴き声も確認されているこの地域は、2019年10月、アメリカのNGO団体「ミッションブルー」により日本初の「HOPE SPOT:希望の海」に認定された。

そんな美しい辺野古の海と豊かな生態系が脅かされている。きっかけは1996年、宜野湾ぎのわん市に位置する米軍基地・普天間飛行場の移設先として辺野古が選ばれたことだ。大浦湾はその後埋め立てや護岸工事が進められ、風景が一変した。

「The HOPE of HENOKO 辺野古・美ら海からのメッセージ」は、そんな辺野古の状況を知ってほしいという思いから執筆された。著者の中山吉人氏は自らも基地建設の反対運動に携わりながら、米軍基地のゲート前に連なるテントで、訪れた人たちに辺野古の自然と基地建設の現状を説明する活動を続けている。

本書には中山氏がテントで出会った国籍や年齢、バックグラウンドが異なる26人の人々から寄せられたメッセージが掲載されている。東京から沖縄に移住したことがきっかけで辺野古の現状を知り、「知ることから始めよう」と周囲に呼びかけるようになったという50代の女性。抗議活動の現場で集まった人々の心の温かさに触れたという都内の男性は、「無関心によって知らないうちに加害者になる」と綴っている。高校生の時に参加した沖縄での全国高校生平和集会で、「子どもたちに綺麗な海を残したい」と基地建設に対する思いを涙ながらに語った地元住民の表情を今でも忘れられないという大学生。26人の言葉はどれも素直で力強く、読む者の胸を打つ。

政策と民意がぶつかり合う闘争の場でありながら、そこは決して殺伐とした世界ではなく、人々の温かい思いやりの心や互いへの気遣い、そして様々な芸術や表現活動が溢れる満ち足りた空間だと中山氏は綴る。その場所で今日も沖縄の人々は戦っている。

同じ国に住む者として、まずは現状を知ること、そして共に考え、心を寄せ、何でも良いから行動してみること。その小さな一歩が沖縄の現実、そして未来を変え、日本全体を変えていく力になるだろう。希望の海・辺野古からのメッセージが多くの人の心に届くことを願う。

『The HOPE of HENOKO 辺野古・美ら海からのメッセージ』
著者:中山吉人
発行日:2021年4月12日
発行:みらいパブリッシング

(冒頭の写真はイメージ)