産業廃棄物から電池用触媒を合成し次世代エネルギー材料に

東北大学は19日、産業廃棄物であるホヤ殻および畜産業の廃棄血液から電池用触媒を合成したと発表した。この研究成果は、英文誌「Science  and  Technology  of  Advanced Materials(STAM)」のオンライン速報版に18日(現地時間)に掲載された。

日本には古来から炭に動物の血液をかけて焼成した「血炭」というものがあり、漂白剤などとして用いられてきた。これは炭素が持つ吸着機能と、焼成時に複合化されたヘム鉄などの血液由来のヘテロ元素成分がもたらす触媒作用を活かしたもの。その一方で、現代においてはヘテロ元素を導入した炭素材料は、リチウム空気電池などに代表される金属空気二次電池の電極触媒として期待されている物質だ。

東北大学材料科学高等研究所の藪浩准教授らの研究グループは、東北三陸地方の特産であるホヤ殻中のセルロースナノファイバー(CNF)を炭化すると品質の良い炭素になること、そして畜産業から出る廃棄血液中にはヘム鉄や窒素・リンなどの元素が含まれていることに着目。これらを混合・焼成することで様々なヘテロ元素が導入されたナノサイズの「ナノ血炭」が合成できることを実証した。

ホヤ殻から抽出したCNFと、廃棄血液を乾燥した乾燥血粉を様々な比率で混合して温度を変えて焼成。適切な条件の下で、CNFの炭化によるナノサイズの炭素構造と、血液中に含まれる鉄・窒素・リンなどヘテロ元素が複合化された「ナノ血炭」を合成した。

今回合成したナノ血炭を用いた電気触媒の特性を評価したところ、プラチナなどのレアメタルを用いた電極触媒に匹敵する性能を持つことがわかった。高価であり資源制約的にも問題があるレアメタル触媒に代替することが期待できる。

この研究は、産業廃棄物となっていたホヤ殻や畜産の廃棄血液を有効活用することで資源循環を促すこと、そして次世代エネルギーデバイスとなる金属空気電池の電極用の触媒を生成することにより、SDGsに貢献するとしている。

研究の概念図

画像提供:東北大学(冒頭の写真はイメージ)