CO2の電気分解によるアルコールなどの直接合成に成功 北海道大学

CO2の再資源化へ道筋 常圧220度の条件下でアルコールなど合成

北海道大学の菊地隆司教授らの研究グループは、二酸化炭素(CO2)を常圧220℃という温和な反応条件で電気分解することでメタノールやエタノール、エチレンやプロピレンなどを合成することに世界で初めて成功したと発表した。CO2を再資源化する炭素循環サイクルの進展が期待される。この成果は9日のiScience誌にオンライン掲載された。

2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けて、炭素資源を循環利用するためにCO2の再資源化が重要な課題となっている。再生可能エネルギー由来の電力でCO2を再資源化できれば、炭素を固定化できるだけでなく、再生可能エネルギーを化学エネルギーの形態で蓄えることにもなる。これまでにも作動温度が100℃未満の固体高分子電解質や液体電解質、作動温度が500℃以上の固体酸化物電解質を用いたCO2の電気化学還元は多数報告されているが、反応速度が小さいことや、生成物が一酸化炭素(CO)やメタン(CH4)に限られるなどの課題を抱えていた。

研究グループは、固体リン酸塩電解質を用いて220℃で発電する燃料電池や、窒素を電極上で直接還元し常圧220℃でアンモニアを合成する電解セルの研究を行っていた。固体リン酸塩電解質が良好な水素イオン伝導度を示す220℃は、CO2の反応に適した温度であるため、適切な電極触媒を用いることで多様な有用物質の直接合成が可能になると着想した。今回開発した電解セルでは、片方の電極に水蒸気を供給し、そこから取り出された水素イオンが電解質を透過して反対側の電極でCO2及び電子と反応することで、炭化水素やアルコール類が生成される。この電極の触媒として、銅、銅とルテニウム、銅とパラジウムの粉末とジルコニアまたは二酸化ケイ素粉末を混合したものを用意し、常圧220℃でCO2の電気分解を行った。その結果、COやCH4に加えて、メタノール(CH3OH)、エタン(C2H6)、エチレン(C2H4)、エタノール(C2H5OH)、プロピレン(C3H6)を直接合成することに成功した。特に銅とルテニウムとジルコニアを用いた電極触媒ではアセトアルデヒド(CH3CHO)も生成された。ここで生成した炭素数が2以上の様々な化合物は、同じ触媒材料を熱化学反応に用いた時にはほとんど生成されなかったことから、電解セルを用いて電気化学的にCO2を直接還元することでC-C結合の形成が促進される可能性が示された。また電極触媒材料の違いで生成物の選択性が変化することも明らかになった。

今後は、電極触媒の最適化や電解反応条件の検討により、CO2転化率と生成物の選択性を向上させ、CO2を効率よく高速で有用な化学物質に変換する装置開発につなげていくという。

(写真はイメージ)