希少な動植物の未来をいかに守るかを考える 3月3日は世界野生生物の日

3月3日は国連が定めた「世界野生生物の日」だ。1973年3月3日に野生生物の取引を規制するワシントン条約が採択されたことを記念して制定された。日本では経済産業省や環境省を始めとした関係機関が、この日に合わせてワシントン条約の普及啓発を実施している。

ワシントン条約とは

ワシントン条約の正式名称は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」。その役割は、野生動植物の価値が芸術や科学、経済などの見地から重要であり、野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることがないように、国際協力していこうとするものだ。

締約国は現在183か国にのぼり、常設委員会から何らかの理由で取引停止勧告がなされた場合は、その国との貿易取引を自粛しなければならない。

取引の対象となる動植物は条約付属書に掲載されており、絶滅の恐れのある種は付属書Ⅰ、取引を規制しないと絶滅の恐れのあるものは付属書Ⅱ、締約国が自国内の保護のため、他の締約国・地域の協力を必要とするものは付属書Ⅲに分けて記載されている。付属書ごとに規制内容が決められており、付属書Ⅰの動植物は学術目的の取引のみ可能で、輸出国、輸入国双方の許可書が必要となっている。付属書ⅠとⅡは原則として約3年毎に改正され、2022年11月にパナマ共和国で開催された第19回締約国会議(COP19)で改正された分は、2月23日から発効されている。

ワシントン条約で規制されている動植物は生きているものだけではなく、はく製やそれらを用いた毛皮のコートなども対象となる。また、海外旅行先で購入して自国に持ち帰る場合も輸入規制と同様の規制がかけられており、注意が必要である。漢方薬や爬虫類の皮製品など、持ち込む際に所定の手続きが必要なものもある。

国内では「種の保存法」で保護

希少な野生動植物を守る法律は国内にもある。1993年4月に「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)が施行され、国内に生息・生育する、又は外国産の希少な野生生物を保全するために必要な措置を定めている。

措置は大きく4つに分けられ、「個体等の取扱規制」「生息地等の保護」「保護増殖」「動植物園」があり、国内の希少野生動植物は取引規制だけではなく、環境大臣が指定した保護区の管理や保護増殖事業計画に基づいた保護増殖事業が行われている。

近年、温暖化や気候変動、人間の生活圏の拡大で絶滅する動植物が増えている。絶滅してからでは、決して自然発生的に復活することはない。希少な動植物の未来は、今を生きる一人一人の意識で守ることができるのだ。